「シングルマザーの多くは、育児のためにキャリアや目標をあきらめたことを失敗と見なす人がいます」と語るフィリピンの2年間MDRT会員、Luviminda Sacroによると、コロナ禍によりひとり親家庭の収入が以前の半分にまで減少したといいます。
フィリピンは約1500万世帯のひとり親家庭を抱え、そのうちの95%が母子家庭です。しかしながらフィリピン人女性は家計を支える存在ではなく、専業主婦として認識されています。パンデミックから2年が経過した2022年1月の女性の就業率が48.1%に急落したのに対し、男性は72.9%にとどまっています。Philippines Center for Women's and Gender Studies(フィリピン女性学・ジェンダー研究センター)によると職場で女性がジェンダーの不平等に直面する理由のひとつは、雇用者が家庭内に別の収入源があると思い込み、女性労働者を先に解雇する傾向があるためです。
国際労働機関によるとロックダウンで最も打撃を受けた接客業、小売業、飲食サービス業は世界的に女性従業員が大部分を占め、2020年に5400万人の女性が職を失い、男性の3%減に対し、前年比4.2%減だったといいます。さらに女性は育児、ホームスクーリング(自宅で教育)、介護などの無給労働を担うようになりました。このような負担は女性、特にシングルマザーに精神的な苦痛や極度の疲労を与える可能性があります。Sacroはシングルマザーに寄り添ったサービスを提供し、ファイナンシャル・アドバイザーが彼女達を良い方向に導く方法を紹介しています。
1. 一人ひとりの話に耳を傾ける
「シングルマザーには、現在の生活状況に至ったさまざまな経緯があります。未婚で出産した後パートナーが去り、ひとりで子どもを育てている方、不幸な理由により配偶者と別れ子どもの親権を持ち続ける母親もいます。また一般的に結婚や恋愛が破綻するのは女性が原因だと非難される傾向にあります。これはほんの一例であり、シングルマザーになった事情がどうであれ、彼女達からエネルギーや自信、自尊心を奪うようなストーリーには心が痛みます。私の経験では金融リテラシーや金融教育によって自信をつける前に、シングルマザーに必要なのは個々の特性です。そのためアドバイザーは彼女達が直面している状況を把握し、最適なサービスを提供しなければなりません」とSacroは語ります。
実は2015年のWorld Bank Financial Capability Survey(世界銀行金融能力調査)の結果、フィリピンの女性は男性に比べて金融リテラシーが高いため、有望な見込客だと言われています。彼女達はリスク管理の手段としての保険商品に理解があり、通常、予算や家計を管理しているため正式な銀行口座を持つ傾向があります。実際、アメリカの学術誌Journal of Consumer Affairsに掲載された2016年の調査によると、女性は男性と比較して金融に関する知識の不足を自覚しており、この意識が女性の学びに対する意欲を高めるため、フィリピンに限らず世界中の女性が金融教育の理想的なターゲットとされています。
「シングルマザーはあらゆるサービスを必要としています。アドバイザーとして、私達は貯蓄から着手し、将来起こり得る危機から身を守るための資産形成を行うことで、彼女達の経済状況を改善するお手伝いができます。例えば、私の10年来のお客さまであるシングルマザーは保険契約を通じて受動的な収入を受け取ることができ、生活スタイルを犠牲にすることなく家族を養っています。貯蓄や金融商品の価値を体感した方々は、推奨者となり周りのシングルマザーにも同じ方法を勧めてくれます」とSacroは語ります。
2. 経済的保障を計画する
シングルマザーの信頼を得たファイナンシャル・アドバイザーは個々のニーズと予算に基づいて彼女達の利益になるような保険契約を設計します。Sacroはシングルマザーにとって最大の懸念は次の3つだと付け加えました。
- 自分が病気になったら家族の生活費はどうなるのか?
- 年を取ったときに誰が自分の面倒を見てくれるのか?
- もし子どもが働ける年齢になる前に自分が死んだら、誰が家族を養ってくれるのか?
「一家の大黒柱として、このような懸念に対処する緊急時対策を備えておくことが不可欠です。最も重要な目標には所得補償、重大疾病時の医療費援助、子どもの学資保険、退職後の生活などがあります。このようなニーズに加えて、ファイナンシャル・アドバイザーは金融教育を通じて、子どもや彼女自身を守るためにパートナーから逃げているシングルマザーの暗い現実に対処することができると考えています。また貯蓄のための効率的な家計配分を教えることで、自立した生活を送る力が身に付きます」と語りました。
3. 連絡を取り続ける
「連絡を取り合っていたおかげでシングルマザーのお客さまを助けることができ、パンデミックの最中に彼女のニーズを支えることができました。最初はロックダウンを生き抜くための資金調達に苦労されていましたが、パンデミックのピーク時に彼女の様子を確認するため連絡を取り、経済的な回復へ導くことができました。保険はクライアントにとって必ずしも最優先事項ではないため、アドバイザーは連絡を絶やさず、タイムリーかつ必要とされる商品やソリューションを提供することで付加価値を生むことができます」と述べました。