このインタビュー前日の朝、Pravin Thakur, CFP, Ed. D.(南アフリカ共和国、21年間MDRT会員)は、同じ南アフリカの3人のアドバイザーと話をしました。3人ともThakurよりずっと年下で「できるだけ早くCFPの資格を取得したい」と口をそろえました。
若手アドバイザーとの語らいによってThakurは25年前を思い出しました。当時、南アでは金融サービス業はまだ職業として認知されておらず、資格取得のための勉強をするとビジネスの時間が奪われるので、多くのアドバイザーが消極的でした。30代後半で教師からアドバイザーに転身したThakurは仕事を辞めようと思ったこともありました。顧客の状況を正しく理解し、最適なプランを勧めるべきなのに、商品を売ることを重視するアプローチに違和感を覚えたからです。「教師になるために4年間勉強しました。しかし、私が金融業界に入った頃はたった3週間のトレーニングで、すぐ営業に出ました」。Thakurは現在セミリタイアしていますが、350人の顧客のリスク管理や退職金プランなどをお預かりし、維持するための2人の管理スタッフを雇っています。
現在、南アフリカにいる6万人のアドバイザーの約8%にあたる4,600人がCFPであり、Thakurが仕事を始めた頃に比べるとかなり増えました。
始まり
おそらく皆さんがビジネスをしている国では、一番古い記憶をたどってみてもファイナンシャル・プランニングはすでに定着していたでしょう。しかし南アフリカでは、2002年に導入されたFinancial Advisory and Intermediary Services Act(法案)が、2004年に法律として成立し、ファイナンシャル・プランニング革命が始まりました。20年近くたった今、その法令はやっと成人を迎えようとしていると言います。
当時の多くのアドバイザーは目先の個人的な不安を解消するための商品を販売する活動に追われていました。しかし法律制定後、ファイナンシャル・プランニングは顧客との信頼関係構築、情報収集と分析(法律、財務、経歴、行動、心理など)、提案、プラン実行、定期的なレビューという科学的手法にのっとった職業として尊重されるようになったとThakurは言います。
今ではこのようなアプローチは基本だと思われるかもしれませんが、変化が起きるとそれ以前の状態を忘れがちです。2005年にあるクライアントのために完全なニーズ分析を行ったときのことをThakurは振り返ります。包括的なプランの内容だけでなく、それを導き出した技術革新にそのクライアントは感動しました。クライアントに「いかがですか」と気持ちを尋ねることで、心を通わせる会話の糸口が生まれます。一方、サイエンスと分析に基づく目標の設定、監視、達成は「定性的」というよりむしろ「定量的」です。
どう変化したか
ファイナンシャル・プランニングが進化し、サイエンスに基づいて顧客のニーズを俯瞰する視点が重視される中で、Thakurは南アフリカで起きている顕著な傾向を実感しています。
- 選択される職業。以前は多くの人が成り行きでこの業界に入り、情熱や目的を欠くこともありましたが、今ではこの職業を選択する人が増えたと語ります。
- アドバイザーの多様性。政治的な理由もあり、以前はファイナンシャル・アドバイザーといえば、白人男性で50歳以上が圧倒的でした。しかし今は、30代の方や女性が多くなっています。女性アドバイザーは男性アドバイザーとは違った視点を持つことが多い、とThakurは感じています。
- 専門性重視。前述のように資格を得ることへの姿勢が大きく変化し、企業も資格を持つ人材を好むようになったため、高学歴で科学的なアプローチをするアドバイザーが増えました。
もちろん、すべてが変わったわけではありません。2008年の金融危機以降、サイエンス(特に投資)に対する意識が高まりました。Thakurの推定によると彼の顧客の40%は、サイエンスを重視した総合的なファイナンシャル・プランニングではなく税金や貯蓄といったシンプルなプランニングを好みます。包括的なニーズ分析が来年、再来年と先延ばしにされることもあります。350人の顧客のうち、年次レビューを進んでスケジュールに組み入れる人が20~30人ほどいますが、本当はもっと増えてほしいと願っています。
教育のための手段
ThakurはニュースレターやSNSを通じてケース・スタディーを紹介し、顧客の希望や不安が科学的プロセスや解決策と結びつくと明るい未来が描かれる例を示し、不測の事態に対して解決策を持っていないとどのようなてん末が訪れるのかを示しています。
サイエンスに基づくプランニングへの理解に関して南アフリカは世界の多くの国に後れをとっているかもしれないとThakurは指摘します。しかし、ファイナンシャル・プランニングの大学講師を務める彼は、自国での変化を目の当たりにし、強い希望を感じています。
5年前、彼のクラスの学生はわずか8名で平均年齢は40代でした。しかし2021年には35人の学生が在籍し、男女同数で平均年齢は20代でした。
「アドバイザーの職業に就く年齢が遅く、すでに子どもがいる人はできるだけ早く収入が必要です。さらに教育を積むことは後回しにされるかもしれません。しかしその傾向も変わりつつあり、良い方向に向かっています」とThakurは強調します。