「イギリスらしさといえば」という問いに、これという正解はありません。ハイティー(軽い夕食を兼ねたティータイム)やすてきなコテージ、サッカーのプレミアリーグから英国王室まで意見はさまざまです。しかし英国のMDRTメンバーにとって、金融サービスといえばすぐに思い浮かぶものがあります。それは「規制」です。
英国において規制は決して目新しいものではありませんが、2012年に施行されたRDR(Retail Distribution Review)は金融業界に大きな衝撃を与えました。RDRは英国金融行為規制機構(FCA)によって制定され、いわゆるコミッションを廃止し、すべてのアドバイザーに一定レベルの資格の獲得を求めるというものでした。
この新しい規制が原因で業界を去る人もいましたが、誰もがRDRを非難したわけではありません。実際、英国Lancashireで6年目のMDRTメンバーであるSarah Helen Hogan, ACIIは「RDRは英国のファイナンシャル・プランニングにとってベストなものです。フィーを設定することはお客さまとアドバイザーにとってプラスになっています」と述べます。
英国Bristolで14年間MDRTのメンバーであるElaine Milne, Dip PFSはアドバイザーが厳密な実施要項に従うのは困難ではあるものの、そのマイナス面をはるかに上回るメリットがあると同意します。
「ルールや規制は厳しく、資格も難しいですが、それを差し引いてもお客さまに提供できるメリットがあり、ファイナンシャル・プランニングを支援するソリューションは素晴らしいものです」
Hoganは、いまだにフィーについて反論されることがありますが、そんなときはもっと明確な説明が必要なのだと受け止めています。
「ほとんどの問題は、コミュニケーション不足か理解不足のどちらかから生じています。なぜそれを実施するのかという理由を明確にすれば解決します」と言います。
英国Shrewsburyで5年間MDRTメンバーのCatherine Gough, FPFSは特に経済面で自立してやりくりしてきた人々とフィーを巡り対立したことがあります。
「これまで誰にも頼らずにきた新規クライアントはプロのアドバイスが必要だと思っても、そこにお金を払うのに抵抗があります」と言います。
Goughはお客さまにとって大切なことを実現させるお手伝いをするのが自分の仕事だと考えています。それは夢の不動産の購入や、勇退などの難しい決断に対して自信を与えることです。そのために純粋な取引だけの関係からより長期的な関係を築くことを目指しています。
Asvin Chauhan, Dip FA, MIFPは英国Leamington Spaで24年間MDRTのメンバーです。彼は特に長期的な関係が見込める市場をターゲットにし、開業薬剤師をメインのビジネスにしています。25年前に2人の薬剤師を初めて紹介されて以来、ニッチ市場として拡大してきました。
「お客さまは経済的な余裕があり、私のファイナンシャル・プランニングや専門的な知識を最大限に取り入れてくださいます。そして長期的な関係を大切にしてくださるので、このニッチ市場は非常にやりがいがあります」と言います。
すべてのクライアントがChauhanのクライアントのように情報通であったり教養があるわけではありません。英国Cuddingtonで5年目のMDRTメンバーであるCarla Brown, FPFSは変更や規制により「アドバイス・ギャップ」が生じていると言います。以前、お客さまは銀行でアドバイザーのアドバイスを受けることができていたのに、現在は独立したアドバイザーを探し、さらにそのアドバイスにお金を払わなければならないからです。
「アドバイスを利用できない人が大勢います。しかし私達のサービスに喜んでお金を払ってくれるクライアントも十分いるのです」
FCAによると、2019年に英国のアドバイザー人口は36,400人でした。これは2016年から顕著に増加しているものの、その数は人口の0.05%に過ぎません。
「英国の人口と比較するとかなり小規模な業界であり、それが問題です」とHoganは言います。
また、アドバイザーの高齢化が急速に進んでいます。世界平均が51~55歳に対し、英国では58歳となっており、現代の英国の特性とは少しずれている可能性もあると彼女は指摘します。
「アドバイザーが英国国民の多様性に対応しているかどうかも疑問で、これは私達が取り組むべき課題です。サポートするお客さまのバックグラウンドや考え方が異なるという多様性は良いことです」
クライアントの利益に焦点を当てた新しい規制も控えています。2023年7月には消費者義務が施行され、より高度で明確な顧客保護基準が導入される予定です。MDRTのメンバーはこの新しい規制が質の高い顧客サービスという、英国ならではの価値を示すものになると言います。
「ビジネスはお金のためではなく、人のためにするものです。お金はお客さまの望みをかなえるためのツールです。そのツールを最大限に活用し、それを実現するのが私達の仕事です。自分の視点ではなく、お客さまの視点で状況を理解することが必要です」とMilneは言います。