私達は毎日、誰かとランチをするといった小さな約束をしています。また誰かに自分のお金を任せるといった大きな取り決めを交わします。同意の質は人間関係の質を決定し、その5段階を理解することはお客さまや同僚、家族としっかり意思疎通ができているか即時に把握する助けになります。
ファイナンシャル・アドバイザーは触媒のような存在で、苦労して稼いだお金を投資する手助けをします。自分のお金をどこでどれだけ早く増やすのかという話になると、同意がいかにいい加減なものになるかを皆さんは良くご存じでしょう。誰かの合意を取り付けたと思っても、それが守られなくてがっかりしたことはありませんか?
数年前、私は手術室における病院文化を改善してほしいと依頼されました。私がプレゼンテーションをしていると麻酔科医が手をあげて「こうしたコミュニケーション・ツールはどれも素晴らしいものですが、これによってチーム全体の質がいかに向上するのでしょうか」という質問をしました。そこで私は合意の5つのレベルと、その意味合いを認識することがいかに個人間の対立を減らすのかQ&Aを通して説明しました。
私はその麻酔科医に「今週末に公開される新作の『ワンダーウーマン』を見にいきませんか」と5回問い掛けてもらいました。私は5通りの返事を用意しました。
Level 1
最初に聞かれたときは「ワンダーウーマンですって? 公開されていることすら知りませんでした」と答えました。私は同意していますか? レベル1は私がただ相手の話したことを認識する段階です。私は聞いたことを認めただけです。
Level 2
2回目に聞かれたときは「去年の秋に予告編を見てから、ずっと見たいと思っていました」と答えました。これは同意を得たことになりますか? 私はポジティブな関心を示しましたが、私が彼とその映画を見たいと思っているかどうかは分かりません。
Level 3
彼がまた尋ねたので「今週末ぜひ一緒に見に行きたいです。ただ金曜日までに税金を納付しなければならないので、それが終われば行けます」と答えました。これは映画を見に行くということですか? 私は彼が話したことを認識しました。ポジティブな関心も示しましたが、先ほどとどこが違うのでしょうか? レベル3は逃げ道のある条件付きのYESだと言えます。映画に行くことが確定したわけではありません。
Level 4
次に聞かれたときは「ええ見たいです、今週末に行きたいです」同意したでしょうか? まだです。私は多忙だし、気が変わる可能性があります。彼にも自分の生活があり、忙しいかもしれません。気が付いたら月曜の朝になっていて、結局見に行かなかったということもあり得ます。レベル4ははっきりとしたYESであり、逃げ道や言い訳のない固い意志があることを意味します。
Level 5
彼は最後に5回目の質問をし、私は「ぜひ見たいです。〇〇映画館で土曜日1時の昼の部はどうですか? チケットは私が買うから、あなたはポップコーンを買ってください」と答えました。私達は映画に行くでしょうか? はい、事細かに決めたので必ず行きます。これがレベル5の同意です。それまでのやりとりは単に意見の一致を図っているに過ぎませんでした。
レベル5の同意だけが良くてそれ以外はダメということでしょうか? いいえ、ここで重要なのは2人の人間の間に同じレベルの同意がないと、人間関係を平和に維持することが難しいということです。2人が同じレベルで同意していれば誤解が少なくなり手術室における、あるいはアドバイザーとクライアントの関係も円満になります。
同意のレベルが異なると何が起きるでしょうか。例えば私がワンダーウーマンをとても見たくて、長い間会っていなかった高校時代の友だちに「今週末私とワンダーウーマンを見に行かない?」と言ったとします。その友だちは「ぜひ行きたいわ。子ども達を見てくれる人がいて、金曜の夜までに気力が回復していれば」と答えました。私はレベル5ですが、友だちはレベル3です。彼女は条件付きで同意してくれました。自分と相手の同意レベルが違うことに気付いたら、もっと掘り下げる必要があります。この約束のどの部分が重要なのか自問してください。自分にとってワンダーウーマンは子どもの頃の憧れのスーパーヒーローで、初日の夜に行くしかないと思っているとしましょう。そうであれば誰か別の人を誘うか、1人で行くかを決める必要があるかもしれません。
一方でワンダーウーマンが幼なじみに連絡する口実だった場合、その約束で重要なのは映画を見に行くことではないので計画を変更することができます。「テイクアウトを持って行くから、2人で昔話でもしない?」と別の選択肢を提案することができるでしょう。
自分と相手の同意レベルが異なることに気付いたとき、迅速で明確な意思決定へと移るのに必要なのは同意事項の何を重視しているのかを理解することです。ある商品をクライアントに提案しようと考えているときに、クライアントから経済的なゴールに役立たないと思われる商品について尋ねられたら、同意のレベルの違いを意識してください。自分がなぜその商品を勧めようとするのか、どこを評価しているのか、またクライアントがもう一方の商品のどこを評価していると思うのかを見極めましょう。なぜならそれを理解すれば、適切な質問をしてギャップを埋める助けになる良い判断へとつながるからです。
不同意のレベル
同意のレベルが5段階なら不同意のレベルも5段階あります。基本的には同じ構造で裏返せばそうなります。
- レベル1は身ぶりや手ぶり、口調、言葉によって相手の言ったことを認識する段階で、興味があるのかないのかを知る手掛かりになります。「そうですか、ワンダーウーマンが公開されているなんて初耳です」
- レベル2はネガティブな関心です。「平凡だという批評を読みました。あまり話題になっていないし、時間がもったいないです」
- レベル3は条件付きのNOです。「ワンダーウーマンを映画館にお金を払ってまで見たくありません。無料か誰かがチケットをくれるなら考えるかもしれません」NOをYESにするのに何が必要かもうお分かりでしょう。
- レベル4は明らかなNOです。「いいえ、考えたこともありません」または「いいえ、行きません」良い条件をつけてもダメです。
- レベル5は完全否定です。「ヒーローものは嫌いです。ワンダーウーマンは見るつもりがありません」意見の相違は明らかです。
誰かを映画に誘うにしても、夢をかなえるお手伝いをしたくて保険や最適な金融商品を勧めるにしても、自分の同意と不同意レベルを知っておくことは長い目で見れば利益をもたらすでしょう。
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