断りに対応するには、「どう捉えるか」が重要です。私にとって断りとは、「私たちが行ったプレゼンテーションと見込客の購買決定の間にギャップがある」ことを意味します。テニスの試合を想像してください。お客さまを反対側のコートに立つ対戦相手ではなく、同じ側に立つダブルスのパートナーに見立てます。パートナーと同じ立場に立ち、相手の視点から断りを聞き、見ることが肝心です。
断りは「もっと情報が欲しい」という要求か、「安心させて欲しい」という要求のどちらかだと考えています。つまり見込客は「なぜあなたのアドバイスに賛成すべきなのか、その理由を教えてください」と言っているのです。このことを念頭に置き、断りそのものに「反応」するのではなく、顧客の疑問に「返答」します。見込客の心を変えることはできませんが、あなたが提供する新しい情報に基づいて、見込客が新たな決断をする手助けならできます。
断りに反応するのではなく、疑問に質問で答えることが重要です。ARTの技を使ってみましょう。Acknowledge(受け入れる)Relate(心を通わせる)Turnaround(逆転させる)を意味します。
以下の断りを例にとってみましょう。
見込客:「御社の商品と他社の商品を比較したいです」
ここでアドバイザーはARTのプロセスを使います。
不安を受け止める。「お客さま、比較したい気持ちはわかります。誰だって一番お得も買いたいものです」
心を通わせる。「私のクライアントのほとんども最初の反応はそうでした。市場にある多くの類似商品と比較し、徹底的に調査しました」
逆転させる。「しかし、比較検討の結果、最終的に私の会社やサービスを選んでくださる方がほとんどでした。その理由は何だと思いますか」この後の見込客の答えが何であれ、それに同意して会話を発展させます。
もっと曖昧な断りに対しては、本当の懸念、つまり氷山の下の水面に隠れているものを特定することから始めます。例えば「少し考えたい」という理由であれば、見込客と一緒にそれを解明します。「具体的に何を考える必要があるのか、お聞かせいただけますか」と切り出して、懸念に対処します。
私が担当したある富裕層のご夫婦のケースを紹介したいと思います。最初にご夫婦の2人のお子さまのための財産保全と蓄財を提案したとき、ご夫婦は「私たちはすでに子供たちに十分なお金を残そうとしています。これ以上の計画は必要ありません」と言いました。
お二人の潜在的願望を特定するために、そこで一連の質問をしました。
アドバイザー:「お客さま、そのお金を何に使えばもっと満足できるとお考えですか」
見込客:「買い物に使いたいです」
アドバイザー:「あとどのぐらいお買い物を楽しみたいですか」
見込客:「なるべく長く」
アドバイザー:「買い物をさらに楽しくするものは何でしょう」
見込客:「セールです」
アドバイザー:「あなただけの特別割引をどう思われますか」
見込客:「もちろんです」
アドバイザー:「では、将来さらにあなただけの特別割引を実現できる可能性のある投資先を探してみましょうか」
見込客:OK詳しく聞きたいです」
この会話は最終的に、10年後の退職時に楽しく買い物ができるように10年計画の投資への申し込みにつながりました。つまり肝心なことは、アドバイスに取りかかる前に顧客の潜在的願望を特定することです。
ほとんどの場合、純粋な断りにうまく対処すれば、セールスに一歩近づくことができます。練習すれば必ずできるようになります。見込客は断りを申し立てる訓練を受けていませんが、皆さんは断り対応の練習をしてうまく答えられようになれます。断りは皆さんに不利に働くのではなく、利益になるはずだということを忘れないでください。
Zinc Goh Zhi Yin はシンガポール在住の4年間MDRT会員。