お客さまが増え続けている個人経営のアドバイザーはいずれ1日の時間が足りなくなります。ある日壁に突き当たり、お客さまが求めるサービスや期待値に応えるために誰かの助けが必要だと気付くでしょう。その際、顧客関係を人に委託する心づもりができていれば、パラプランナーを雇うことは理にかなうかもしれません。
通常パラプランナーの仕事はアドバイザーの監督下でファイナンシャル・プランをまとめ、ファイナンシャル・プランニング・ソフトウエアを操作して顧客の初期情報を入力し、顧客向けのレポートを作成することであり、場合によってはお客さまとの面談にも同席します。サポートを受けることでアドバイザーは新規顧客の獲得に専念する時間を確保できます。しかし金融サービス業界のトレーナー、講師そして著書のあるMichael Kitcesは「パラプランナーを採用する前提条件として、アドバイザーは不屈の精神で成長にコミットしなければならない」と指摘します。
「成長するつもりがないならパラプランナーを雇うのは一般的に良い考えとは言えません」とKitcesは自身のブログNerd's Eye Viewで論じています。「長期的にビジネスが成長しないのであれば、成長志向のパラプランナーは去り、もっと良い機会を求めて転職することになるからです。そうでなければ独立して自分の会社を立ち上げるでしょう。つまり単に収益性の高い個人事業を営むことが目的であれば、事務スタッフを雇うのが最適です」
成長にフォーカス
多くの場合、アドバイザーは人を雇うことは許容範囲を超える支出につながると考えています。しかしこの意見にCraig Palfrey, CFP(英国ウェールズ、14年間MDRT会員)は「紹介を得ることやより多くの人に会うための時間を確保できることによって、ビジネスが成長する可能性を理解していない」と指摘します。
「皆さんが個人事業主あるいは2人のアドバイザーだけでビジネスをやっているのであれば、思い切ってやってみるしかありません。事務スタッフであろうとパラプランナーであろうと、どちらでも大差はないと思います。ビジネス・コーチは苦手なことは人に任せて自分は得意なことをしなさいとアドバイスします。この仕事に就いているなら新規顧客の開拓と顧客の問題解決は得意分野のはずです。事務処理、メールのフォロー、保険会社との対応などは人に任せてください。そうすればより多くの契約をお預かりし、より多くのご家族を助け、より多くの人に会うことができるようになります」とPalfreyは述べます。
新たにスタッフを雇い入れるたびにビジネスは成長してきました。自分が得意でない仕事、時間を最大限に活用できない仕事から解放されるからです。
—Craig Palfrey
Palfreyが20代前半でこの業界に入ったとき、会社は「サポート・スタッフがいればアドバイザーはより多くのお客さまに対応できる」という考えを持っていました。そこで会社は、彼ともう一人のアドバイザーがアシスタント1名を雇ってシェアするべきだと主張し、給与の一部を負担してくれました。Palfreyともう一人のアドバイザーは妹のLisaを雇い、パラプランナー兼事務管理者として働いてもらうことにしました。彼女は現在もPalfreyのもとで働いています。その数ヶ月後、アポイントメントやスケジュールを管理するスタッフをさらに1名雇いました。現在Palfreyの事務所では、6人のアドバイザーに21人のサポート・スタッフと4人のパラプランナーがいます。Palfreyがパラプランナーに求める資質のひとつは「細部にこだわる注意力」だと言います。
「私達は志願者の細部への注意力をチェックするためだけに、一連のテストを行っています。スキルはトレーニングで身に付けることができます。キャリアを歩むための旅支度や専門的なことも全てテストや社内研修で学ぶことができます。唯一細部にこだわる注意力は本人に備わっていなければ教えられません。そのこだわりがあってこそこの仕事にとどまりたいという意欲になり、お客さまにサービスを提供したいという情熱になるのです」
Palfreyの会社では、2人のアドバイザーが事務管理者とテクニカル・パラプランナーとして既に働き始め、金融グループの専門学校で学んだ別の1名がトレーニー・アドバイザーとして間もなく加わる予定です。Palfreyは「全てのアドバイザーが時間の90%を顧客対応と顧客の問題解決にあてる」というビジョンを掲げています。
「新たにスタッフを雇うたびにビジネスは成長してきました。自分が得意でない仕事、時間を最大限に活用できない仕事から解放されるからです。時給100ポンドもらえる仕事があるのに、なぜ20ポンドの仕事をする必要があるのでしょう。その20ポンドの給料を払うほうが賢明です」とPalfreyは強調します。
将来的に採算がとれる
「資金不足は人を雇用しないことへの一般的な言い訳です」とPeter Hill, ChFC(米国アイオワ州、27年間MDRT会員)は言います。スタッフを雇う余裕があるかどうかは自分の給料を優先するかどうかの問題かもしれません。
「自分のライフスタイルを維持するのに必要な収入を確保し、残りは一種の貯金箱のようなものに入れておきます。四半期ごとあるいは毎年の自分へのボーナスや新しいスタッフを迎えるまでの資金として蓄えておきます。ビジネスではなくボランティアならスタッフを雇うことは困難でしょう。しかしビジネスとして経営しているのであれば、必要な役割をこなしてくれる人を雇うのは比較的簡単なはずです」と言います。
自営の場合、人を雇うことは必ずしも自分の減給を意味することにはなりません。しかし「時には2歩進むために1歩後退する覚悟がいる」とHillは付け加えます。
「自分の給料が減ると考えたことはありませんが、収益に関しては間違いなく下がります。人を雇い入れたスタート・アップの時期は減益を承知しています。アドバイザーは単に利益を出すことを前提にビジネスを展開し、給料をもらっているのではないはずです」と強調します。
Hillが最初に採用したのはアポイントメント担当者でした。やがてファイナンシャル・プランニング・アソシエイト(現在のパラプランナー)を加え、バックオフィスでファイナンシャル・プランの作成業務を手伝ってもらうようになりました。その後7人のアドバイザーを中心に、アシスタント・アドバイザー、パラプランナー、事務アシスタントなどのサポート役がチームを組み、ビジネス・グループは進化を続けてきました。
彼の下で働くパラプランナーは資格を持った専門家ではなく、金融サービスに携わったばかりの人や、経営管理学や財務、リベラルアーツを専攻した大学の新卒です。全ての社員は性格テスト(Kolbe)を受け、認知能力と物事の進め方に関する潜在能力の判定を受けます。Hillは優れたパラプランナーはファクト・ファインディングとフォロー・スルーのスコアが高いと考えています。またお客さまと温厚に話ができる人材を求めています。パラプランナーは数ヶ月のOJTを経て投資管理、リスク管理、信託・相続税、事業経営に関する問題など、金融サービスの専門知識を幅広く学びます。「パラプランナーにはアドバイザーの活動分野に関するほとんど全ての知識が必要です。ファイナンシャル・プランニングの最新情報を全て知っていなければなりません」と強調します。
パラプランナーを置くことで得られる大きなメリットのひとつは、パラプランナーにお客さまとの打ち合わせの準備をしてもらえることです。打ち合わせで話題になりそうなことを予測し、アジェンダにあるその項目にフラグを立ててもらいます。Hillはメモを見直し「準備万端で自信を持って打ち合わせに臨める」と言います。
パラプランナーの中には将来アドバイザーになることを目指している人もいれば、キャリアには満足していて扱うケースや対象分野を増やしていきたいと考えている人もいます。どのような道を歩むにせよ、パラプランナーのフットワークによってHillはより多くのお客さまにサービスを提供することができます。さらにパラプランナーの働きや他のサポート・スタッフの努力は、ビジネスを見つめるもう一つの目になってくれます。
「お客さまには『私ひとりでも仕事をきちんとこなしていけると思いますが、もう一人が見ていてくれたらサービスの質がさらに向上すると思います』と言います。より広範囲により深く関わることが私達の会社に価値をもたらします。お客さまはひとりのアドバイザーだけではなく、多くのスタッフと関係を築くことができるのです」とHillは言います。
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Peter Hill p.hill@vfghelps.com
Craig Palfrey craig@penguinwealth.com