ある富裕層のクライアントとの間で起きた出来事をお話しします。アポイントメントを勝ち取るのに常識にとらわれない発想が必要でした。ある日、新聞を読んでいてふと一人の名前が目にとまりました。この街で高く評価されている公認会計士で、多くの富裕層や有名人の経理を任されている方です。一緒に仕事をしたら面白いに違いないと思い、私のクライアントになってもらおうと思い立ちましたが面識はありません。そこで挨拶の手紙を送って数日待ちました。その後、電話をかけて改めて自己紹介をし、アポイントメントの時間をとってもらうよう説得しようと思っていました。
「初めまして。私はLife Insurance Corporation of IndiaのBharat Parekhです」と熱く自己紹介を始めましたが、すぐに「生命保険に興味は無い。私の時間はとても貴重なので募集人に時間を割く余裕は無い」と打ち切られてしまいました。
この言葉で短い会話は終わりました。電話を切りながら、心の中で次の挑戦への準備を整えていました。この見込客のことが頭から離れませんでした。数日後あることを思いつきました。自分の会計士に電話し、銀行口座にいくらあるか尋ねました。合計5800ルピーあるとのことでしたので「5000ルピーの小切手を準備してほしい」と指示しました。15年前、これは大金でした。翌日、私はきちんとタイプした手紙と一緒に小切手を送りました。手紙の中で、同封の小切手は先日の電話で時間を割いてもらったことに対する報酬だと説明し、彼のアポイントメントの費用としてもっと支払っても構わないと書き添えました。アポイントメントを取ることが最重要事項だと強調しました。書留で送付し、サインしていただく受領証を同封しました。
数日後、会計士から受領証が送られてきました。彼に電話をかけて、改めて自己紹介をしました。すると会計士は「Bharat Parekh、今どこにいる。数分後に私のオフィスで会えないか」と大きな声できびきびとした口調で言いました。「30分後に伺います」と即答しましたが、緊張と恐怖でどんな展開になるのか予想できませんでした。私は最悪の事態を覚悟してオフィスを訪ねました。意外なことに、彼は席を立ち温かく迎え入れてくれました。私に席を勧め、自分以上にプロフェッショナルで時間を大切にする人に会えてうれしいと言いました。また、私のアプローチが気に入った、大胆でクリエイティブだ、と称賛し、冗談めかして「こんなに魅力的なアポイントメントの申し出をしてきたのは君が初めてだ」と付け加えました。
その会計士は私の上客の一人となりました。彼は換金していない私の小切手を返送してきました。また私の小切手をはるかに上回る額の保険料の小切手が同封してありました。契約成立です。この出来事をきっかけに、ユニークで創意工夫に富んだ方法で見込客を獲得しようと考えるようになりました。セールスとは顧客に勝利することではありません。顧客に商品とアドバイザーの両方を受け入れてもらうことです。
Bharat Parekhはインドの31年間MDRT会員です。Contact: care@bharatparekh.com