富裕層のクライアントを獲得することはファイナンシャル・アドバイザーにとって最大の目標の一つです。経験豊富なふたりのMDRT会員はセミナーやワークショップを通じて富裕層の関心を集める効果的な戦略を構築しました。
英国Oswestryの28年間MDRT会員Karl Harteyはアドバイザーになったばかりの頃、年間平均25回のセミナーを開催していました。また、米国フロリダ州の39年間MDRT会員Marc A. Silverman, CFP, ChFCはキャリア当初、年間約40回もセミナーを開催していたといいます。
業界のベテランである2人は新規顧客を集めるためのイベントとしてではなく、見込客のデータベースを構築するスタート地点としてセミナーを利用することを勧めます。「キャリア当初はクライアントもいなかったので、市場開拓として積極的に活動していました」とHarteyは言います。最近ではセミナーの回数が当初の半分ほどになったといい、その理由の一つは当時よりも現在の参加者の方がより資産保有額が多いという事実があると説明します。
Silvermanは長年にわたりイベントを開催したことで、見込客データベース(その大半は会社のワークショップで出会った人達)がおよそ4,500人にまで増加したと述べました。「その方々に頻繁にメール・マーケティングを行っています。私達はお客さまから電話をかけてもらうためにたくさんのことを試していますし、実際お客さまからたくさんお電話をいただいています」
ステージ設定
富裕層ビジネスの構築は一夜にしてできるものではありませんが、初期段階での慎重なプランニングによって成功への道筋をつけることはできます。2人とも富裕層のお客さまを惹きつけるセミナーを開催してきました。
Harteyは城などの豪華な会場が豊富にあるイギリスでビジネスを展開できることを幸運に思っています。彼の会社(代理店)はOswestry市内から車で1時間ほどのペックフォートン城でイベントを開催しています。イベントの目的は見込客の記憶に残り、友人と共有できるような体験をしてもらうことだと言います。「お客さまは『今日はどこに行ったと思う? ペックフォートン城で粋な資産管理会社のイベントがあったんだ』と話すでしょう。会場がDays Inn(ビジネスホテル)だったら、そんな会話にはなりません。お客さまは自分が行った場所を自慢したいのです。費用は安くありませんが、安さを求めているわけではありません。私達が目指しているのはファーストクラスです」と述べました。
イベントの目的は見込客の記憶に残り、友人と共有できるような体験をしてもらうことです。
—Karl Hartey
イベントの進行や司会に印象的な講師を招くことで見込客の注目を集めることもできます。Silvermanはブロードウェイ俳優でモチベーション・スピーカーのSandra JosephやQuincy Krosby、Prudential Financial社のチーフ・マーケット・ストラテジストといった有名人を講師として招いたことがあります。
ワークショップは夕方から開催し、参加者に夕食を提供してリタイアメント・プラン、社会保障の最低引き出し額の条件など、さまざまなトピックスについてアドバイスをします。
「ワークショップの最後に『今晩、何か得るものがあったという方は手を挙げていただけますか? その中で無料相談会にお越しになりたい方は、お手元の用紙にご記入のうえ会場にいるアシスタントにお渡しください』と伝えます。こうしてデータベースを作り始めました」
参加者にアンケートを記入してもらうことはワークショップでデータを収集する手段の一つにすぎないといいます。夕食時には各参加者にあいさつをし、会話中に頭の中でメモを取り、アシスタントに伝えます。そのために参加者は30人以下にとどめ、比較的小規模なイベントにしているのだとSilvermanは言います。
Harteyの会社はしばらくすると既存の顧客を招待するようになり、セミナーは既存客と見込客が入り交じった状態になりました。「一人ひとりにストラップをお配りし、既存のお客さまには黒、見込客にはシルバーのストラップを着けていただきます」と説明し、既存のクライアントからは熱い支持を得ていると述べました。「お客さまが無償で私達の営業部隊となってくれているので見込客から一目置いてもらえます」
信頼関係の構築
イベントでクライアントに喜んでもらうことは、ファイナンシャル・アドバイザーがセミナーやワークショップで見込客との信頼関係を築く方法の一つです。HarteyとSilvermanはともに書籍を複数出版しており、その書籍をイベントで配布することで専門知識を示しています。
Silvermanは自身の著書を日常的に名刺代わりに配っています。Harteyも参加者に配布するお土産の中に著書を入れることがあります。著書があることはこの活動に信頼性を与えていると考えています。「参加者に『友人の分ももらっていいですか』と聞かれることもあります。答えはいつもイエスです。これが本の力です。制作するにはお金がかかりますがクライアントにとっては非常に大きな意味があります」
Harteyによると本と食事は参加者が受け取るパッケージの一部だといいます。参加者の多くは参加するだけで何らかのプレゼントをもらえることを期待しているため、彼の会社ではオリジナルのチョコレート、メモ帳とペンなどに手書きのお礼状が入ったギフトセットを配っています。
「無料ランチのためだけにいらっしゃる方もいますが、それでも結構です。『この会社のイベントで無料でランチが食べられた』と帰って話してくれれば、少なくともきっかけになります。私達が生み出そうとしているのはそういった磁力です」とHarteyは言います。
Silvermanは自身の著書を日常的に名刺代わりに渡しています。
システムの微調整
Harteyのチームは見込客との信頼関係を強めるために既存客を呼び込むなど、経時的にセミナーの運営方法を微調整しています。最近ではプレゼンテーションの構成に大きな変更を加えました。
以前はワークショップのトピックや会社の価値を伝えることにほとんどの時間を費やしていました。しかしこのような構成ではもったいないと気付きました。「例えば、初めてのデートで相手が1時間ずっと自分のことばかり話していて、あなたに話しかけたり興味を示すことがなければ、2回目のデートをしてくれますか?」と彼は問い掛けます。
プレゼンテーションを再構成し、自己紹介の後に参加者にイベントで達成したいことについて尋ねるようにしました。「少し話しやすい雰囲気を作ると、遺言、信託、税金、年金などについてもっとよく知るために参加したのだと話してくれます。皆さん同じような問題を抱えているので、いつも同じ答えが返ってきます」
このアプローチにより富裕層が必要とする解決策についてプレゼンテーションを行うことができます。なぜなら自分達は見込客の問題を既に知っているからだとHarteyは言います。プレゼンテーションの後半では会社のPRや成功事例を紹介します。
「この数ヶ月間でプレゼンテーションの順番を変えたところ、アポイントメント率が向上しました。私達にとってはそれが一番重要です」
セミナーの企画・開催に関する詳細はこちら mdrt.org/seminar-guide。
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Karl Hartey karl@karlhartey.com
Marc Silverman marc.silverman@hubinternational.com