「聞き役」に徹して信頼感を獲得 ~営業が目的ではなく心から人を応援することが使命~
自分の子供にして欲しい仕事とは
大学を卒業後、地元佐賀県でハウスメーカーの営業を始めた光武会員は、大手ハウスメーカーの紹介営業部門で全国1位になるほど、営業マンとして手腕を発揮していました。旦那さんの誕生日にはワインを、お子さんの誕生日にはお菓子をといったように、住宅を建てたお客様へ年数回の訪問を欠かさず行い、年365日働いてしまうような猛烈な営業マンだったといいます。そんな順風満帆な営業マンに転機が訪れたのは、外資系保険会社の営業所長から言われた言葉です。「あなたは住宅を売り続ける仕事に誇りはありますか」と聞かれ、「もちろんあります」と答えました。すると、「あなたのその猛烈な営業を、自分の息子にもさせたいですか?」とさらに聞かれました。思わず「自分の子供にはさせたくない」と答えてしまいました。自分の息子にして欲しくない仕事を続けるのはやめよう。光武会員はハウスメーカーでの全国1位の栄光を捨てて、新たにファイナンシャル・アドバイザーへの道へ進むことにしました。
営業成績は晴れのち曇り
大手ハウスメーカーの紹介営業部門で全国1位という営業力は、ファイナンシャル・アドバイザーへの転身後も発揮され、2年目に初めてのMDRT登録となりました。3年目も順調な成績を挙げたのち、光武会員は営業所長として地域の後進育成の職務を担うことになりました。しかし、自分にとって得意分野である営業の仕事は、教えるとなるとなかなか簡単ではありませんでした。まだ30代前半だった光武会員にとっては、「後進育成には自分自身の人生経験が少なすぎた」と当時のことを振り返っています。再びお客様の近くで仕事がしたいと営業職に復帰したものの、以前のような営業力をなかなか回復できず、スランプに陥ったといいます。
同期から言われた「お前、人に会っていないぞ」
元来の営業力で経歴を積み上げてきた光武会員は、自身のスランプを認識してファイナンシャル・アドバイザーの同僚に相談をもちかけました。「厳しいことを言うぞ。お前、最近人に会ってないじゃないか」。同期入社の同僚は光武会員の過去の行動予定表を見て開口一番に言ったといいます。「ファイナンシャル・アドバイザーのなかには、ひとつ新しいことを学んでひとつ行動すれば、ひとつの成果が生まれる、という甘い考えを持っている者が多い。でもそれではダメだ。継続してずっと取り組んで、取り組んで、取り組み続けて、いつ成果がでるか分からないけど信じて取り組み続ける人にしかチャンスは来ない」。同僚の厳しい指摘に、自分がキャリアを続ける中で楽をしても契約できればいい、と無意識に安易な方向へ向かっていたと気づかされたといいます。
自分は人を応援することが好き
光武会員は目が覚めた想いで「人に会う」ことを強く意識するようになりました。人に会い、人の話を聞くなかで、自分はファイナンシャル・アドバイザーであること以前に、学生時代にやっていた「応援団」のように会う人を応援しようと考えるようになったといいます。コロナ禍でなかなか人に直接会えない時には、新型コロナウイルスについてあれこれ調べました。ある建設会社の社長の話を聞いているとき、ふと濃厚接触者の定義について教えたところ、その社長はとても参考になったと喜んでくれました。この社長とはハウスメーカーの頃からの長い付き合いで定期的に顔を合わせる仲でしたが、光武会員はファイナンシャル・アドバイザーとしてではなく、よく会う「応援団」としてこの社長と接し続けました。
営業意識をもたない「聞き役」
ある時、この会社の事務所を訪れると、普段の明るい職場とは打って変わって社長も社員も悲しい表情をしていました。どうしたのか聞いたところ、社長は「社の幹部社員が突然亡くなってしまった。だけど今のうちの会社では十分な手当も出してあげられない。これでは可哀そうだから、すぐに保険に入る」と突然いわれました。その話を聞いて、事務所にいた社員が泣き出してしまうような状況となっていました。「応援団」に徹することで、いつの間にか自分に対する信頼感が生まれていたと感じました。「人の話を聞くというのは簡単そうでなかなか難しい。自分が何かをアドバイスしようとか、相手の話に自分の話を被せようとか、そんなことを考えていたら真剣に話を聞くことはできない。私は人の話をとことん聞くように心がけています」と力を込めて語ってくれました。「営業が目的ではない、人に会うこと、人の話を聞くこと、人を応援することが私の使命だ」と言い切る光武会員は、スランプから完全に立ち直り、また強い追い風に乗り始めたようです。
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