私がまだ駆け出しのアドバイザーだった頃、南アフリカの水準でいうところの中・高所得者層のあるお客さまを担当していました。そのお客さまはご兄弟で物流ビジネスを展開し成功を収めていましたが、ブローカーからリスク保険を購入する以外、ほとんどファイナンシャル・プランニングをしたことがなかったそうです。彼は34歳で妻との共有財産であるビジネスを営み、3人の未成年のお子さまがいました。しかしその若さで依存症に苦しみ、既に健康問題を抱えていたため、結婚生活だけでなく、家庭のキャッシュ・フローも停滞していました。
複雑な案件だったので、まだ駆け出しだった私は深みにはまることになりましたが、幸いにも大きなサポートを受けることができたので迅速かつ効果的に学ぶ機会を得たことは間違いありません。私がMDRTに入会し、できるだけ多くの会議に出席した理由の1つは、世界のベストと称される方々からお客さまを公平に扱い強い行動規範と倫理観を持って行動することを学びたかったからです。
お客さまのポートフォリオを分析すると、とんでもない事実が発覚しました。会社の資産を借金で賄い、インド人コミュニティーで重視されるステータスを築きたいという欲求から、派手な個人支出を繰り返していました。キャッシュ・フローはひっ迫し、最悪の嵐に立ち向かわなければなりませんでした。
間もなくこれは通常のケースではないことが判明しました。お客さまに必要なのはファイナンシャル・ニーズ分析、ビジネス・ニーズ分析、資産設計、信託設計、投資設計、保護(リスク)設計、税金対策でした。これらを総合的なファイナンシャル・ライフプランとしてまとめ、近親者のための財産形成と長期的な保護を確保しなければなりませんでした。これらを一層難しくしていたのが夫婦間の問題でした。このご家族には法的にも精神的にもサポートが必要でした。
お客さまの健康状態や夫婦仲が悪化する中、お客さまのビジネスは堅調に拡大していました。私は多くのユニークな方法を駆使し、資産と扶養家族の保護に配慮した実行可能な計画を維持する必要がありました。
はっきりしていたのは、あらゆる対策の中で不可欠かつ緊急を要する部分は「リスク対策」であることでした。その後、長期的な資産・信託設計に着手しました。お客さまは既に2つの少額リスク保険に加入していたので、特に医療上の懸念や保険会社から保険金の支払いを断られる可能性を憂慮し、重要事項の情報開示を定期的に確認することが自分の責務であると自覚しました。その結果、保障内容が不足し保障範囲も限定的であることが発覚したので、保険を乗り換える前に新たな保険の引き受けを行わなければなりませんでした。
このように包括的なアプローチを発展させた結果、このご家族とのご縁は14年続いています。この間、何度もキャッシュ・フローの不足から失効してしまった契約を救わなければなりませんでした。構築をお手伝いしたポートフォリオには事業存続のためのキーパーソン生命保険、事業と資産保護のための自社株売買契約付きパートナーシップ保険、お子さま達の教育資金計画、流動性資産を確保するための短期投資ビルダー、将来起こりうる離婚調停を見据えた家族信託、資産と遺産を守るための遺書作成などが含まれました。
これらの保障によって支払われた保険金は、最終的に1500万ZAR(南アフリカランド)になりました。重大疾病保険、就業不能保障、そして終末期医療保障、葬儀保険、生命保険などを組み合わせたがん保障です。数ヶ月前に末期と宣告されたお客さまのお見舞いに行った私は、目を見て手を握りながら「ご家族のことは心配ありません」と伝えることができたのは信じ難く、感動的でした。既に終末期医療保障とそれ以前に締結されていた保険の給付金を請求することができ、遺産分割をほとんど済ませていたのです。ご家族が経済的に困窮することはなく、今後は私が彼の兄と一緒にビジネスの案件を処理することを約束しました。私達2人の目には涙が浮かび、こみあげるものがありました。
このケースでは、ご家族に幅広いサービスを提供することが求められましたが私は「頼れる人物」としての評判とブランドを確立し、ご家族や友人、同僚とのネットワークができました。そして未公開株式や地域社会での影響力を持つ中・高所得者というターゲット顧客層を確立することができたのです。
このようなケースでは継続的なプロフェッショナルの育成が求められます。近道はないし即効性もありません。パーソナル・ブランド、存在感、資格、提携、資質を積み上げ、一刻も早くプロフェッショナルになって、常に素晴らしい価値を提案できるようになってください。
Kobus Kleynは南アフリカGautengの10年間MDRT会員です。コンタクト先:kobus.kleyn@liblink.co.za