パンデミックにより多くの職場が在宅勤務や電話会議に切り替わる以前から、当社のビジネス・コミュニケーションの7割は既に電子的に行われていました。しかし、対面で交流する機会が減ったことで、ボディーランゲージを読み取ることができなくなり、メールの内容を考え過ぎた結果、チーム内での誤解や不安が大きくなってしまいました。
非言語的なボディーランゲージによって暗黙のうちに理解できていたものが、今ではデジタル・ボディーランゲージで明確に伝えなければならない、と講師で著書があるコラボレーションとデジタル・チームワークのエキスパートのErica Dhawanは言います。誰もがデジタル・パーソナリティを持っていて、それが人間関係を良くも悪くもします。だからこそデジタル・メッセージを注意深く読むことは新しいリスニング・スキルであり、メッセージを明確に書き表すことは新しい共感の形です。
例えばSaraが同僚のJohnにメールを送ったときのやり取りを紹介します。Johnはメールの内容を「プレゼンテーション用にこのアイディアをどう思う?」と読み取りましたが、Saraの本音は「素晴らしいアイディアだけど、まだ完全に絞り込めていないのであなたの考えを聞かせてほしい」でした。JohnはZoom会議が続く長い1日を終えた後にメールを読み、Saraのプレゼンテーションは終わったものと思っています。Johnは「時間内に収まったの? ちゃんと考えなかったみたいだね」と返信しました。しかし本音では、自分よりもSaraがその仕事に詳しいので、理解するためにもっと詳しく聞かせてほしいと思っていました。15分の会話で済むはずだったものが、その後数時間もストレスフルなメールのやり取りを続ける羽目になりました。
チームのコミュニケーションが欠けているわけではありません。メッセージ交換の非効率性を排除し、正しい方法で洞察を得るにはDhawanが「コネクショナル・インテリジェンス(つながる知性)」と命名したものが必要です。人間関係やネットワークの力を活用すれば、画期的なイノベーションとビジネスの成果を生み出すことができます。Dhawanはこのコネクション・モデルをデジタル・ボディーランゲージの4つの法則に分類しています。
1. 目に見える形で評価
- 相手の時間を尊重する。ミーティングのアジェンダを明確にし、最初の数分間で雰囲気を作ります(ステージ設定)。開始時刻の5分前にスケジュールを変更したり、事前の連絡なしに欠席することは絶対に避けます。
- 内向的な人、外向的な人の性格を理解し、一人ひとりの違いを受け入れる。内向的な人は話すよりも書くことでコミュニケーションを図る傾向があり、会議以外でのオープンなコミュニケーションを好みます。Dhawanのクライアントにはバーチャル会議の前にアジェンダを配布しているところもあります。出席予定者は事前にコメントを提出することができ、コメントはチャット・セクションに掲載され、通常はディスカッションの起点として議題に含まれます。そうすることで内向的な人が発言し、集団思考をなくすことができるとDhawanは言います。外向的な人は定期的な対面式やビデオ会議を好み、またエンゲージメントを高めるために会議の司会者や挙手機能を必要とする場合もあります。両方の性格を受け入れる余裕を持ちましょう。
- スタッフを大いに称賛する。パンデミック中に社員が一斉に自主退職した「大量離職」の原因は、雇用主から「多大な評価」を得られなかったからだとDhawanは言います。一人ひとりを称賛する方法を見つけ、個人の好みに応じて伝えます。電話、Eメール、面接などコミュニケーションの好みに加え、メッセージを送る頻度も知っておくことが求められます。この方法はスタッフだけでなくお客さまにも適用できます。
「大量離職」の原因は雇用主から「多大な評価」を得られなかったからでした。
—Erica Dhawan
2. 丁寧なコミュニケーション
- メッセージをよく考えて読み、分かりやすく書く。「水曜か木曜に話しませんか?」という問い掛けに「はい」と返信しても相手には分かりません。
- 簡潔さより「マニアックな明確さ」を優先する。依頼するときは依頼内容、優先度、関係者、納期を明確にします。
- メールのルールを作る。差出人欄の「To」の人に返信し、「CC」の人には返信しないなど。件名に何が必要かを明記し、2H(2時間)や4D(4日)などのラベルを付ければタイムラインを伝えることができます。
- 適切な経路を選ぶ。全てのメッセージがどんな方法(Eメール、SNSなど)でも意味が通じるとは限りません。何を言うか、どこで言うかについて意図と目的をしっかり持ちましょう。
3. 自信に満ちたコラボレーション
- 期待に沿って実行。すぐに電話をかけ直すと言いながら2週間も待たせてはいけません。翌朝に欲しいものを前日の夜10時に依頼するのもだめです。相手を信頼し、また信頼してもらえる人になりましょう。
- 問題解決を手助けするよう奨励する。Dhawanの知るある会社では、より良いプロセスを考案するために委員会を設置し、一般的にはあまりアイディアを求められることのない事務アシスタントが、実は最良の解決策を提供してくれる存在だと気付きました。
- 会議の効果を最大化する問い掛け。本当に会議で話し合うべき内容か? 冒頭の5分間で全員が心から参加できたか? もっと短時間で済ませられないか? 会議の招集メールで意図、目標、アジェンダをはっきり伝えたか? 会議の冒頭で成功を定義したか? ハイブリッド会議ではリモートでの参加者に気を配ったか? 会議直後に次のステップを共有できるようにきちんとメモを取ったか? 必要であれば、最新情報を共有すべき出席者のために会議を録画したか?
信頼を与え、信頼を得る
4. 全面的に信頼する
- まずは相手を信じる。周りが自分を理解し、自分も周りに弱さを見せられる状態をつくることです。
- ちょっとしたコミュニケーションを図るための場面を作る。例えば、まだ聞いたこともないようなアプローチとしてどんなことができますか? 見落としていることはありますか? 聞きたくない悪いニュースは何ですか? このような質問をアジェンダに含めることで参加者は事前に答えを準備することができます。他にも私達が悪魔の手先だったら何と言うでしょう? または、次回の会議をより良くする方法をひとつ提案してください、などの問い掛けがあります。
難しい会話を建設的に
否定的なフィードバックや批判を受けたときのルールはただ一つで、内容を詳しく聞くことです。
これはSarita Maybinが大学院生だった頃、先輩からもらったアドバイスです。数年後Maybinが大学の学部で管理職として働いていたとき、スタッフに学部を改善するために何かできることはないかと尋ねました。すると「あなたがもっと良い上司になればいい」と言われました。
彼女の中の悪魔が彼の反抗的な態度を大学に報告しようとささやきましたが、先輩のアドバイスを思い出し「詳しく教えてくれませんか。例を挙げてください。何か提案はありますか」と尋ねました。そのやり取りからスタッフは日頃のパフォーマンスをどう評価されているか知らないことに気付きました。そして、彼は個別面談の際にスタッフの良いところと改善すべきところを一つずつ伝えてはどうかと提案してくれました。
講師、作家、そして困難な会話を建設的な対話に変えるエキスパートであるMaybinが最初に悪魔のささやきに駆られて行動していたら、どんな結果になっていたかと思うとゾッとします。その後いくつか質問を補足した結果、コラボレーションが促進され、より良い仕事関係を築くことができたのです。たとえ相手のことをある程度知っていたとしても、正しい心を持ってその人や状況を肯定的に見なければ世界中のどんな素晴らしいフレーズを使っても役に立たないとMaybinは注意を促します。つまり、細かい人は細部までこだわる、しつこい人は執着する、歌姫は自信満々、衝動的な人は突発的に動くといった固定観念を変えるということです。
このようなマインド・シフトは同僚や上司、お客さまに対する話し方にも応用できます。「~する必要がある」「~すべき」といった防衛シールドを張るフレーズではなく、「~してもらえるとうれしい」「~してくだされば助かります」「うまくいくか一度やってみましょう」といった解決策を求めるフレーズを使うようにします。
要するに「意地悪な言い方はしない」と伝えたいのです。Maybinの「人がより良く協働するための50のフレーズ」には次のものがあります。
- どのように解決すれば良いでしょうか?
- 私がお手伝いできることはありませんか?
- 少し説明していただけますか。
- つまり、~ということですか。
- あなたが _____________を行った場合、スタッフに与える影響は _____________です。
- ~を懸念しています。
- ~は可能でしょうか。
- ~に関するあなたの考えを聞かせてください。
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Erica Dhawan erica@cotentialgroup.com
Sarita Maybin sarita@saritamaybin.com