終身会員の父から地盤と看板を承継
加藤光隆会員は、終身会員である実父光浩さんから2年前に顧客を引き継ぎ、以後2年連続でMDRT会員となっています。光浩さんのアシスタントとしてサポート業務を開始したのは10年前のことで、以来8年に渡ってお客様の保全業務を行ってきました。当初、父光浩さんから「お客様と信頼関係を築くのに10年はかかる」と言われ、光隆会員自身も10年以上のサポート業務を覚悟して取り組んできましたが、それより早い段階で本格的に自分が父に代わってファイナンシャル・アドバイザーとして前面に立つ「ポジションチェンジ」を迎えました。
父からの打診で決断
小さな頃から父親の仕事への憧れや継ぐ意思があったのかを聞いたところ、とくに強く意識していたことは無いといいます。実際、加藤会員は福祉系の大学に通い、将来は介護関連の業務につくことを目指していました。しかし、大学卒業を控え就職活動をするなかで自身の将来について悩むことになりました。そんなタイミングで父から「この仕事をやってみるか」という打診があって決断することになりました。加藤会員は大学を卒業後、社会勉強するために幾つかのアルバイトを経て、父光浩さんが所属する保険代理店に入社しました。入社後は当初から父の仕事を引き継ぐことを前提に、お客様の保全業務でファイナンシャル・アドバイザーのキャリアをスタートしました。持病をもつ父にとっても後継者の育成を考えていた時期で、父のアシスタントとしてお客様に会ったとき「息子さんがサポートに入ってくれて安心しました」と言われたという。
信頼関係があるからこそ慎重に
父光浩会員は郵便局での営業経験を経てから生命保険の営業を始めており、すでに四半世紀以上に渡る関係をもつお客様も多くいます。同僚からは父子での承継は羨ましいと言われることもあります。「お客様との距離が通常は100だとすると、父親の代で関係ができていれば少なくとも95からスタートできる」と言われたこともあります。「ポジションチェンジ」して間もない頃、父の時代からお客様だった老夫婦から知人を紹介されたとき、「光浩さんの息子さんだったら信頼できる」といって、新規の契約が父のころからの信頼をもとに成立しました。加藤会員はこの時、100でなく95からスタートしていることを自らも実感したといいます。 すでに強い信頼関係ができているお客様からは「(熊本県の方言で)よかよ、よかよ」と言って、こちらの提案を細かく確認しないでOK返事をもらうケースもある。しかし「よかよ、よかよ…と言われることほど緊張することはない」と加藤会員はいいます。「信頼関係があるからと言ってお客様に損をさせる訳にはいかない。慎重には慎重を重ねてプランニングすることが大切です。95からのスタートは決して楽なものではない。」 という加藤会員の言葉には、強い思いが感じられます。
承継というよりは“縁”
加藤会員は、父子での営業承継についてあまり堅苦しく考えず、“縁”を感じているといいます。 あるお客様からは「あの時の小さな坊やが今はこんなに大きくなったんだね」と聞くことがあります。父光浩さんは加藤会員が小さな頃からお客様訪問のとき、まだ幼い加藤会員を連れて歩いたと言います。自分がこの仕事を強く志した訳ではないが結果として継ぐことになったことや、こうしたお客様と今自分が向き合っていることに“縁”を強く感じ、また“縁”を大切にしていきたいと言います。現在も父親とは同居しており、ポジションチェンジはしたものの今でも“師匠”にはいつでもすぐに相談できます。また、加藤会員は自宅で父子を見守る母の存在も大切だといいます。「お客様から自宅に電話が掛かってくると母が対応するんですが、父が普段しっかりと家でお客様の話をしているのでスムーズに対応できます。お客様の中には感動される方もいて、父より母のファンになる方もいらっしゃいます。」自分が父親を越えてやろうといった威勢のようなものが無く、家族円満で、“縁”を大切にしながら等身大でお客様と向き合う加藤会員の姿勢からは、保険営業の承継という難問に、ひとつの明確な形が見いだせます。
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