引退は多くの人が経験する最大の転機のひとつであり、ワクワクするような新しい章の始まりとなる一方で、経済的な準備ができている人にとっても最も困難な時期になる可能性があります。リタイアメント・プランを専門とするMDRT会員によれば、引退はアドバイザーが新たな現実に対処するようお客さまを助けるだけでなく、より強い絆を構築し、より多くの紹介を獲得するチャンスになります。
カナダ・バンクーバーの22年間MDRT会員でMDRT事務局長に就任したClay Gillespie, CFP, CLUは勇退はこれまで誇りを持って生きてきた人にとっては特に人生最大のストレス要因になり得ると言います。
「リタイアメントは幸せでワクワクすることだと思っている人が多いので、現実を伝え道案内をしてあげなければなりません。リタイアメントは旅であり目的地ではないことをまずお客さまに理解してもらうために話し合うことが重要です」と述べました。
ゴーゴー期
Gillespieによると退職後、最初の2年間は一般的に最もお金がかかる時期で、クライアントが新しい環境に落ち着き始めるのは3年目くらいだと言います。Gillespieがゴーゴー期と呼ぶ最初の数年間に現役時代に我慢して温めていた趣味や機会を追求するからです。
例えば自宅の改築や海外旅行などの大きな目標もあればガーデニングに取り組むなどのちょっとしたことも含まれます。退職した人が最初の2、3年で取り組む計画は往々にして費用がかさみ、繰り返されるものではないとGillespieは言います。
アドバイザーは経済的な事柄だけに注目するのではなく、引退後の生活がどのようなものになるかを一緒に考えてあげることでお客さまの生活に付加価値を与えることができます。引退後であっても収入ニーズは時間と共に劇的に変化すること、より多くの資金が必要になるのは高い確率で最初の数年間であると認識するべきだとGillespieは言います。
「勇退後の生活全体を通してインフレを考慮した収入を確保するべきだとアドバイザーが思い込んでいるなら、この業界は新規退職者の役に立っていません。税金とインフレを差し引いた手取り収入がお客さまの生涯を通して安定的に供給されると仮定してプランニングするなら、まだ健康でエネルギーに溢れている初期のゴーゴー期に多くの資金を使うべきではないということになってしまいます」
Gillespieは経験上クライアントが収入を増やす必要があるのは一般的に毎年ではなく3、4年に一度であることに気付きました。スローゴー期と呼んでいる活動量が減る時期に達するころには毎年のように収入(生活費)を増やす必要はないと考えています。
「リタイアメントの各段階でどれだけの収入が見込めるのか、道しるべを示す必要があります。答えられるようにしておくことが私たちの仕事です」と語りました。
リタイアメントの各段階でどれだけの収入が見込めるのか、道しるべを示す必要があります。答えられるようにしておくことが私たちの仕事です
— Clay Gillespie
手探りではうまくいかない
米国ウィスコンシン州の16年間MDRT会員Juli Y. McNeely, CFP, CLUは引退後生活の財務以外の部分でも手助けをすることがお客さまの夢を実現するカギだと言います。「引退後の生活についてきちんと会話をすることなく『ぶっつけ本番』で何とかなると思っているクライアントが多いのには驚かされます」と述べました。
McNeelyとチームはMDRTのホールパーソン・コンセプトに基づきクライアントが考慮すべき話題のリストを作成しました。リタイアメント・プランのチェックリストをアドバイザーと検討するのか、お客さまだけで検討するのかは自由です。目的は将来の目標についてお客さまに心を開いて考えてもらうことです。
検討するべき項目は以下の通りです。
- 引退後にどのような趣味や関心事、あるいは何か新しいことに挑戦しますか?
- 仕事を辞めたら働いている友人、すでに引退している友人とどのように付き合いますか?
- ご自身の重大な健康問題や長期療養、あるいは高齢の親やまだ扶養する必要のある子どもの世話など退職後に生じるかもしれないリスクをどのように軽減しますか?
- 引退後の納税義務に対処するための優れた税理士や所得税申告書を作成してくれる人はいますか?
- 保険の受取人指定などの法的文書は整っていますか?現在そして亡くなった後の贈与や慈善活動についてどのような計画を立てていますか?
- バケットリストにはどのような旅行先が書いてありますか?
- リタイア後に新しいキャリアを始めようと思いますか? 配偶者がまだ働いている場合はどうしますか?
- どのような人として記憶されたいですか? 大切な人にどんな良いことをしてあげたいですか?
- 家族や友人とのつながりを深めたいですか?
McNeelyのアプローチはファイナンシャル・プランニングでは対処しきれない落とし穴についても触れています。例えば家族との時間の管理については「時間に関してルールを決めるか境界線を引く必要があると思いますか?」と尋ねることにしています。
リタイア後の現実
Gillespieは退屈さやアイデンティティーの喪失、自分の価値が分からなくなるなど引退後に直面する可能性のある精神的なリスクについてもクライアントと研究しています。定年後の離婚もよくあることだと言います。
こうした問題は早期退職を考えている人にとってさらに顕著になるかもしれません。「引退後のライフスタイルを確立していないのに早期退職すると、友人たちはまだ働いていたり、退職していてもすでに自分のライフスタイルを確立し疎遠になっていたりする可能性があります」
基本に立ち返る
McNeelyの質問は対人関係に焦点を絞ったものが多いですが、税金、将来起こり得る健康リスク、資産税対策、将来の経済状況全体についても話し合っています。
「お客さまに良い公認会計士や税理士がいることを確かめる必要があります。また私たちが取り入れている節税対策に沿っていることも重要です」と述べました。
こうした質問はまだ忙しく働いているクライアントが見落としがちな問題について会話を始めるきっかけになります。
「お客さまのファイナンシャル・プランのギャップを話し合い、パートナーと足並みがそろっていることを確認することも重要です。贈与や慈善活動、あるいは予算の使い過ぎ・余り過ぎの対処法についても、早めに話し合っておいた方が良いでしょう」と語りました。
Gillespieも同様にクライアントが退職後に直面するかもしれないインフレ、長寿、市場変動、健康問題などさまざまなリスクについて話すようにしています。お客さまには「人生で引退は一度きりですが、私は毎日お客さまの引退のお手伝いをしているので精神面でも経済面でも良い点と悪い点を見てきました」と伝えています。
不安を抱いたり混乱したりするのは普通で予想されることであり、アドバイザーはその点を強調するべきだと語りました。
ビジネスに役立つ
クライアントを引退へと導くのは精神的にも大変な仕事ですが、お客さまが賢い決定をして目標を達成するのを助け、満足していただくことはビジネスを強化することにつながるとMcNeelyは言います。
「まずイメージを描き、次にロードマップを作って話し合いや意思決定の道案内をすればお客さまは歓迎し、私たちのビジネスとの距離も縮まります」と言います。
彼女はお客さまが直面する金銭的な問題だけでなく精神的な問題もサポートすることで顧客数を増やすことができました。
「このようなサービスを提供するアドバイザーはあまりいないため弊社は多くの紹介を受けてきました。私も皆さんも経済面で退職準備を助けることは得意ですが、さらにできることがあるのではないでしょうか? 私たちはお客さまが自分だけのしっかりとしたリタイアメント・プランを確保するよう助けることができます。私のお客さまに『準備はできていますか?』と聞いたらきっとYESと答えるでしょう」と語りました。
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Clay Gillespie claygillespie@gmail.com
Juli McNeely juli@financialclaritybydesign.com