ファイナンシャル・アドバイザーとして、プランニングやリスク軽減に関して多くの知識があることはクライアントにとって有益です。しかし、皆さんができることを一方的に説明しても、お客さまに期待するほどの感動を与えられません。それどころか困惑したような目で「考える時間をください」と言われるでしょう。皆さんに自覚があってもなくても面談は不成功です。その理由をお話ししましょう。
「特に若いアドバイザーはお客さまとのコミュニケーションで自分が面白いと感じる知識をすべて発信しようとして、しばしばバケツをひっくり返すかのように大量の情報を浴びせる傾向があります」と2000年度MDRT会長を務めたBrian H. Ashe, CLU(フロリダ州、52年間MDRT会員)は指摘します。「自分の知識をAからZまですべて説明したがりますが、お客さまがまだコンセプトを理解できていない段階で情報を押しつけてはいけません。もっとシンプルであるよう心掛け専門用語を減らすことに重点を置くべきです」と述べます。
コミュニケーションの基礎
優秀なアドバイザーと一流のアドバイザーを分けるポイントは専門用語や複雑なビジュアルを使いこなすことではありません。差別化のポイントは、優れたコミュニケーション・スキルと顧客に対する思いやりです。
「お客さまと会話をする場合、私たちがどれだけ賢いかをお客さまは気にしません。彼らが求めるものは問題に対するシンプルで明確な答えです。そして自分のことを大事にしてくれるだろうか、という点です」とJeremy Mark Wellington, Dip PFS, Dip CII (英国、12年間MDRT会員)は言います。
良質なコミュニケーションと気遣いを示せば、お客さまは理解できた、話を聞いてもらえたと感じるとWellintonは強調します。良質なコミュニケーションには4つの重要な要素があります。
1.耳を傾ける。「どう答えようかと考えながら聞くのではなく、理解しようと思いながら耳を傾けなければ、問題の根幹を理解することはできません」
2.明快かつ簡潔に答える。
3.誠実かつ透明性を持って接する。「知らないことがあれば『知らない』と認めてください。そして『調べます』と伝えます。長い目で見ればあなたの誠実さは評価され、お客さまの忠誠心と尊敬を得ることができるでしょう。自信のなさは見抜かれます」
4.忍耐力を持つ。「長い面談がやっと終わりました。今日も何件かの面談をこなしました。もう終わりにしたい。しかし今焦ると顧客の忠誠心や理解を失う危険があります。サービスの低下も懸念されます。忍耐力を持ちましょう。面談の最後に2分だけ時間を取ることで、冷静に要点をまとめ、リラックスし、答えや理解のための余白を確保できます。そうすれば生涯忠実な顧客を獲得することができるでしょう」
異なる学習スタイルを考慮する
ほとんどのお客さまは皆さんほど金融の話題に精通していません。彼らには皆さんの専門知識が必要です。しかし商品やプランの説明という細かいことではなく「その商品やプランはどう役立つのか」に焦点を当てた分かりやすい情報が必要です。「時計の仕組みではなく、時間を教えて欲しい」というのと同じです。また、人によって学習方法や情報処理の方法が異なるため、情報を提示する際にはその点も考慮する必要があります。
Chee Hong Gan, ChFC, CLU(シンガポール、14年間MDRT会員)はこんな話をしてくれました。「視覚的な情報を好む顧客もいます。その方にはより多くのビジュアル資料を提供します。一方、聴覚的な情報を好む方には視覚情報を片付けてひたすら会話をすることが大事です」
例え話には心配りを
例え話は皆さんが伝えようとしているコンセプトを理解していただくのに役立つコミュニケーション・ツールです。しかし、すべての例え話が通用するわけではありません。お客さまにはさまざまな背景や考え方があるため、ある種の例え話はお客さまに響かないかもしれません。例えば、成長サイクルに関する話は、農業に例えた方が分かりやすいという人もいれば、ゴルフの方が分かりやすいという人もいるでしょう。
また年齢、性別、宗教、民族など、ステレオタイプに基づく例えは避けるべきです。お客さまの気分を害する可能性があります。例えば、料理や子育てに関する例えは必ずしもすべての女性に理解されないかもしれません。また家の修理やスポーツカーに関する例えがすべての男性に響くわけではありません。「自分のことを理解していない、話を聞いてもらえていない」と思われたら、信頼やビジネスを失う可能性があります。
「お客さまになじみのある言葉やコミュニケーション・スタイルを使うことで、複雑なアイディアをより早くクライアントに伝える能力が向上します」とGanは強調します。
シンプルなイラスト
多くのMDRT会員に愛され「コミュニケーションはシンプルに」というコンセプトを提唱し説いたのは、故John F. Savage, CLU(オハイオ州のレジェンドMDRT会員)でした。彼はシンプルに円を使って説明しました。
Savageは円を描き「これは先に貯蓄する人たちです」と言い、もうひとつ円を描いて「こちらは先にお金を使い、残ったお金を貯蓄に回す人たちです。驚くべきことに、先に消費して余ったお金を貯蓄する人々は、常に先に貯蓄してから消費する人々の下で働くことになります。なぜなら、先に消費すると収益が上がる可能性はほとんどないからです」と説明しました。この2つの円を使った説明によってSavageは4~5ヶ月で200~300件もの契約をお預かりしていました。シンプルであることは実に効果的です。
「John Savageは素晴らしい教師でした」とJames E. Rogers, CLU, CFP(カナダ、50年間MDRT会員、2008年度MDRT会長)も同意します。「難しい言葉を振り回しても顧客の心を動かすことはできないと学びました。お客さまと話すときは、お客さまに分かる優しい言語で話さなければなりません」と述べました。
MDRTのYouTubeチャンネル(https://bit.ly/mdrtjohnsavage)で故John Savage会員がアニュアル・ミーティングで行った名プレゼンテーション“Selling millions in life insurance a month(月に数百万ドルの生命保険を売る)”の抜粋をご覧ください。“Suit up, gang – You’re starting(スーツに着替えろ、スタートだ)”の全編はMDRT Store内のmdrt.org/suit-upでご覧いただけます。
Ashe、Gan、Rogers、Wellingtonのビデオはmdrt.orgでご覧いただけます。
CONTACT
Brian Ashe bashe29843@aol.com
Chee Hong Gan vincentgan@thevinceproject.com
James Rogers jimrogers145@gmail.com
Jeremy Wellington jerry@fpconcepts.co.uk