多世代の親族全員と信頼関係を築き育むことにより数十年も続くお客さまとのパイプを構築し、将来的に事業を売却するときにも後継者にとってより魅力的なビジネスにできます。あるMDRT会員のビジネスモデルは一族の財産が何世代も存続するというベネフィットを説明してお客さまの心を動かしています。別のアドバイザーは子ども達や若者に金融リテラシーを教えることにより複数の世代と信頼関係を維持しています。
世代を超えた資産計画
クライアントに万が一のことが生じた後に、初めて受取人とお会いするという状況は避けるべきです。
悲嘆に暮れる遺族からすれば親のアドバイザーが病院やお葬式にやって来て書類作成のために出生証明書や運転免許証などの本人確認書類を求めるのは無神経だと思われても仕方がありません。死去や悲劇が起きる前に受取人に親の計画を知らせ、保険金と相続のプランや税金の影響について話し合っておいた方がずっとうまくいくはずです。
そのような成果を生み出すためHari Maragos, CFP, B Bus(オーストラリア・ビクトリア州の8年間MDRT会員)はお客さまとして複数世代のメンバーを育てるという従来とは異なるビジネスモデルを構築しました。彼はリード・アドバイザーおよび窓口担当者として相続プランニングの弁護士Michael Perkinsや税理士、その他の専門家と共に取り組んでいます。チームとして協力しながら資産の保全、財産のガバナンスと管理、戦略を実行するための文書作成をメインに必要に応じて意思決定のサポートを継続的に行っています。この市場をターゲットにしてから1年もしないうちに54の複数世代ファミリーを顧客として持つに至り、その中には5世代にわたるお客さまもいます(まずミドル世代が顧客になり、次に親の世代さらには孫の世代へと拡大し最年少は4歳のお孫さんです)。
「お客さまになっていただく以前から収入や資産、購買力をプールしておくことのメリットを認識するよう助けています。これはどの家族にとっても重大な分岐点となりました」とMaragosは述べました。
共通の基盤を築く
他の世代とのつながりは通常Maragosがクライアントにポートフォリオ上の税金や財務の懸念事項について説明し、影響を受ける子ども達やご両親も話に加わるべきだと勧めるところから始まります。受取人全員に事前に説明しておけばご家族に万が一のことがあったときに誰に相談すれば良いかが分かります。クライアントがお孫さんへの贈与を希望する場合、MaragosとPerkinsのチームはごく短い期間に一族の3世代にサービスを提供します。
「お客さまが大きな悲しみに襲われてから難しい会話をする事態を回避するためにお客さまに受取人と事前に引き合わせていただくことにしています。相続税や高額所得にかかる税金を軽減させる戦略はたくさんあります。何かが起きてからではなく、お客さまがお元気なうちにお子さんを交えて話し合っています」とMaragosは述べました。
初期段階の話し合いではご家族に世代を超えて資産を維持するという共通の価値観や指針、目的意識があるかを見極めます。兄弟間に溝があったり、自分の取り分をすぐに欲しがる人がいたりすると、全員が積極的な気持ちにならないこともあります。しかし聞く耳を持つ家族に対しMaragosとPerkinsはロックフェラー家などで成功したファミリー・バンクという概念を紹介してきました。富は世代間で分割されると散逸し、通常はご本人の死後10年以内に消滅するとPerkinsはクライアントに伝えています。しかし家族が資産を維持するために長期的な視点を持ち可能な限り長く投資し続ければ、ファミリー・バンクの力は世代を超えて集合的に維持されることになります。
お客さまと事業にとってのベネフィット
このアプローチにより遺産のガバナンスやプランニング、管理や相続について危機が生じるかなり前に話し合うことが可能になり、家族は十分な情報を得た上で決断を下し、対立や誤解の余地を排除し、これまで気付かなかった解決策や可能性を発見できます。このやり方はお客さまを説得して自分の名刺を子ども世代に渡してもらい電話が来るのを待つより、はるかに効果的な紹介獲得方法であるとMaragosは付け加えました。「子ども達は必ずと言っていいほど自分から自己紹介してくれます」
もちろんお客さまにも寿命があり、アドバイザーがご親族との信頼関係を持たない限りこれまでの記録管理などで得ていたフィーやコミッションはその方が亡くなった時点で終わってしまいます。実際、多くの調査はミレニアル世代の66~80%が親の資産を相続した後それまでのファイナンシャル・アドバイザーを解雇すると報告しています。しかし世代を超えて続くよう管理された財産は存続し、アドバイザーとの関係やその親族からもたらされる収入源も存続しています。もう一つの利点はMaragosのビジネスがより魅力的になる点です。仮に事業を売却することにしても、後継者は将来のクライアントとのパイプを期待することができます。
お客さまはMaragosとPerkinsを別々に雇い、2人はプロジェクト開始時に相談料を、導入後はサービス料をそれぞれが請求します。両氏のウェルス・マネジメントは(紹介ではなく)協力に基づく各種専門分野からなる総合的な仕事であり、アドバイザーと弁護士はお客さまとのやり取りの全てをお互いに㏄で共有していて、業務分担を明確に決めてあるので取り分でもめたり縄張り争いは起きません。
「隠し事のない率直なコミュニケーションによって非常に素晴らしい環境が生まれます。お客さまは私のものでも、あなたのものでも、私達のものでさえありません。私達は共通の目的を果たすために協働しているのであり、私達が目指すのはお客さまのお役に立つことです」とPerkinsは述べました。
お客さまになっていただく以前から収入や資産、購買力をプールしておくことのメリットを認識するよう助けています。
— Hari Maragos
次世代への教育
子ども達は大学生になっても親から言われる「使わないで貯めなさい」というお金の管理しか知りませんでした。Bobby James Ning, CFP, BAは同世代にお金の本当の仕組みを伝えたいと思い、同級生のAlphil Jay Guilaranと金融リテラシーを教える学生クラブを立ち上げました。卒業後このクラブはビジネスへと成長し、高校や大学での金融教育および病院や医療機関の従業員に福利厚生プランを提供しています。
Ning(17年間MDRT会員)とGuilaranは共にカナダのバンクーバー出身で最終的にアドバイザーとなり、サービスの一環として金融リテラシー・カウンセリングを行っています。1日6時間で5日間にわたって開催される相続人と受取人のための有料キャンプには富裕層の親(必ずしも顧客とは限らない)の通常8~15歳の子ども達が参加します。参加者はビジネスの構築について学び、ビジネスがどのように収益を上げるかを発見し、自分のビジネスプランを作成します。また利益の一部を地元のチャリティー団体の支援に振り分けることにより、思いやりの力を体験します。最終日には親をキャンプに招待し、子ども達の起業家精神や学びを見てもらいます。中には感銘を受けてNingとGuilaranに子どもへの追加コーチングを依頼したり、キャンプを他の家族に勧めたりする保護者もいました。
ふたりは金融リテラシー教育への取り組みを汚さないように、自社のPRをしないように慎重に注意しています。「私達は透明性をもって当社のビジネスを説明しますが、教育してから売り込むようなことはしません。見込客の掘り起こしとして利用するつもりは決してありませんが、このやり方がかえって新鮮に映ったようです」とNingは述べました。
金融教育の取り組みを通して学んだのは、人々が弁護士や会計士を雇うように私の知識に喜んで対価を払ってくださることです。
— Bobby Ning
5カ年計画
多世代にわたるファイナンシャル・プランニングをさらに本格的にしたもう一つのプログラムは5カ年計画です。アドバイザーは子どもに対してどのような心配事があるのかを親から聞き出し、子どもに身に付けさせたい目標や価値観に基づいて高校から大学卒業までのプログラムを有料で作成します。例えばお小遣いをもらっている15歳の子どもには小切手帳の収支の合わせ方や銀行の明細書の見方、携帯電話のデータプランを調べてそれが資金管理にどう影響するかを教えます。予算は使えるお金、貯金、シェアするお金に分割し、大学生になる頃にはクレジットカードの利息の影響や在学中に自分と親が負担する出費についても詳しくなります。
子どもと親が参加する振り返りを四半期ごとと年ごとに行うので、お金の流れや次の四半期の見通しを皆で確認することができます。キャンプやコンサルティングを経験した人たちは成人すると金融サービスのクライアントとして戻ってきます。この取り組みには他にも良い点があり、子どもを預ける目的で始めた親達がその内容を気に入ってご加入いただくことが多くあります。
コネクション
裕福な家庭のご子息リストがあれば最高ですがNingは守秘義務契約を結んでいるため開示できるものは一切ありません。しかし彼のビジネスは家族が多世代にわたる富を維持し成長させるのに役立つ別のコネクションを生み出しています。
「弊社は影響力の中心的な存在(CoI。紹介者)であるファミリー・オフィスやプライベート・バンカー、投資アドバイザーやその仕事仲間など、弊社の教育プログラムを評価する人々と仕事をするようになりました。『家族があなたの仕事に興味を持っています。少しお話を伺ってもいいですか?』と声を掛けられます。金融教育は進化し、他の人々とつながる手段になったと感じています」とNingは言います。
さらにフィーやコミッションから収益を得る必要に迫られる専門職にとって、金融リテラシーを教えることはもう一つの収入源です。「サイドビジネスや副収入を持つクライアントと同じで、私達は知識に対して報酬を得ています。金融教育の取り組みを通して学んだのは、人々が弁護士や会計士を雇うように私の知識に喜んで対価を払ってくださることです」とNingは締めくくりました。
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Hari Maragos hari@vwm.net.au
Bobby Ning bobby.ning@flci.ca