担当アドバイザーのいないご夫婦から電話があり、奥さまからご自宅に招かれました。ご主人は会社から高額の退職金を提示され、早期退職を勧められたそうですが、退職してやっていけるかどうか自信がないとのことでした。
奥さまに直接お会いし、ご主人は大手の農薬メーカーにお勤めで、かなりの退職金があることを知りました。年金もあり、すぐに全てを生活費にする必要はないので、退職金をロールオーバーし、半分を給付期間が保障された年金に移し、半分を証券会社の投資口座に振り分けるようお勧めしました。また、ご主人に万が一のことがあった場合に備え、生命保険への加入もお勧めしました。奥さまが不自由なく暮らせるよう退職金口座の資金にかかる税金を支払うためです。しかしご主人は考えが読めない方でした。打ち合わせの間、石のように硬い表情でじっと座って私を見つめ、あまり話をしませんでした。私の提案に対して、ご主人から同意の言葉がなかったので、今後の行動を確認することなくその日は帰りました。
お客さまが私の提案内容を消化する時間を確保するために私は通常1週間待ってからフォローアップします。しかしこのときはご主人がすぐに行動しました。数日後、私がオフィスで仕事をしているとご主人が正面入り口から入ってきました。個人年金への資金移動分として当社宛ての50万ドルの小切手を持参していました。私はびっくりしました。最初の打ち合わせでご主人はどんなことを希望しているかおっしゃいませんでしたので、私は50万ドルを預け入れるための口座の開設さえしていなかったのです。前回の提案にご主人は納得していたのですが、言葉では言わなかったのです。そこで私たちは彼の個人年金口座を開設し、ご主人に生命保険に加入していただきました。
期待を超える行動によってガイド役としてご家族との信頼関係を構築することができました。
それから約8年後のある朝6時に娘さんから電話がありました。お父さまが脳出血で亡くなったという知らせでした。彼はまだ60代でした。「母は大丈夫でしょうか」と聞かれ、悲しい知らせを一瞬で振り払わなければなりませんでした。娘さんには「お母さまは大丈夫ですよ」と伝えました。その後、年金をストレッチ年金口座に移し、保険金を投資に回すことで非課税の収入(訳注:アメリカの税制が適用されている)を得られるようにしました。また、奥さまが多額の退職金資産を抱えたまま亡くなった場合に備えて、生命保険への加入をお勧めしました。
奥さまは短期間で資産を100万ドル以上に増やしていたので、万が一死亡した場合に、3人の息子さんと娘さんの相続税を支払うための資金を確保することができました。
奥さまは8年ほど前に亡くなりました。お子さまたちとは、密というほどではないですが、多少の連絡を取っていました。そこで私のオフィスに全員を招き、今後の希望について伺いました。最終的にそれぞれに150万ドル以上を渡すことができましたが、そのうち2人はお金を受け取って音信不通となり、残りの2人は私の顧客となりました。
現在、娘さんのプランニングを全て引き受けています。同じ街に住み、彼女も8~10年後に引退を控えています。彼女は相続で得た25万ドルをまだ退職金口座に残しており、それを私たちが増やしているのですが、どんどん値上がりしています。彼女にはご主人と一緒に計画的に積み立てた資金がさらに50万ドルあります。
アーカンソー州に住む息子さんは当初懐疑的でした。お父さまが亡くなったとき私を全く知らなかったので最初は信用されていないことを感じていました。亡くなったお父さまはピックアップトラックを持っていてとても大切にしていました。当時、私の息子は自動車整備工場で働いていたので、そのトラックを整備してもらい葬列の霊きゅう車として使うことができたことを知ると、息子さんは私の気配りに大変驚きました。今ではもうひとりの次世代のお客さまとなりました。今、彼らのリタイアメントについて話し合っています。ちょっとした親切と期待を超える行動によってガイド役としてご家族との信頼関係を構築することができました。
Michael Gaetaはアイオワ州の11年間MDRT会員です。Contact: michael.gaeta@prudential.com