
私のクライアントの多くは、収入に関係なく自分の貯蓄額を全く分かっていません。この仕事に就いた頃、これは適切なプランニングをする上で大きな課題となりました。
まず、クライアントに勇退後の暮らしのために毎年いくら貯蓄しているのかを尋ねました。多くの方は退職金勘定に振り込まれる天引きされる額は知っていましたが、私が知りたかったのは「収入の中からどれくらいを将来のために貯蓄しているのか」という点でした。聞き取った数字をもとに、時間をかけて慎重にファイナンシャル・プランを作成し、提案書を作成しました。
そして提案書をクライアントに提示したものの「実際の貯蓄はそんなに多くないかもしれない」と言われることが多くありました。ほとんどの場合、聞き取った数字よりもずっと低かったのです。ということで時間をかけてファイナンシャル・プランを作っても、誤ったデータのせいで全部無駄になってしまいました。
ほとんどの人は当座の資金用の口座と貯蓄用口座を持っています。しかも多くの場合、その2種類の口座を複数持っています。お金が余ったり、当座資金の残高が多過ぎると貯蓄用口座に移す傾向があります。一方、予想外の出費があったり、クリスマスの時期に出費が増えたり、休暇でどこかに行きたくなったりすると、貯蓄からお金を引き出します。入金と出金を繰り返すうちに、今いくら貯蓄があるか把握できていないのです。
現実的で、実行可能で、持続可能な提案を作成するために、まずお客さまの貯蓄額を正確に知ることが非常に重要です。現在、私はお客さまにさまざまな種類の貯蓄を教え、それを使って貯蓄額を把握する方法をレクチャーしています。
短期、中期、長期口座を作る
プランニングの最初の段階で、お客さまに短期、中期、長期という3種類の貯蓄の話をします。理想を言えばこの3つは別々の口座が望ましいです。通常は、すでに開設してある口座をそれぞれ目的のために転用できます。
短期貯蓄は、食料品や住宅ローンの支払い、携帯電話代などの定期的な出費や生活費に充てます。通常は当座預金を使います。その対極にあるのが長期貯蓄で、老後資金のための貯蓄です。この口座の資金は老後資金を積み立てるための投資という目的でのみ下ろせます。その中間に位置するのが中期貯蓄で、貯蓄の目的を判断するのが難しいものは全てこの口座に入ります。老後のためでも定期的な支出のためでもありません。新車購入、大学進学、旅行などが考えられます。
緩衝材となる中期口座を設けることで、長期口座に入るお金は老後資金のためだけの貯蓄となるので、資金が順調にたまっているかを把握しやすくなります。一時的な出費のために使われることはありませんし、プランを作成する際には、正しい数値をベースに作成できます。
顧客の意識を変える
3種類の口座の目的についてお客さまの意識を変えていただく必要があります。本当に重要なのは、中期口座を持つことを検討してもらうことです。突発事項が発生したときのために(突発事項は常に起きます)資金を確保しておけば、長期的な貯蓄に手をつける必要はなくなります。
もちろん、このプランが機能するためには、中期貯蓄と長期貯蓄の両方に資金を準備しておく必要があります。私はお客さまがそれぞれの口座に定期的に入金するよう、預け入れる金額を指定するお手伝いをしています。
最も収入が多いお客さまでさえ、長期口座の貯蓄額を明確に把握できるというアイディアは大歓迎されます。貯蓄に対する意識が変わることでプランニングが成功しやすくなります。中期口座を持てば具体的な貯蓄額を把握でき、プランの実行可能性に自信を持てるのです。
お客さまの貯蓄額が分かると、プランの作成を自動で行うこともできます。また投資口座への自動送金を設定できます。支払い可能な保険料の上限を知ることもできます。これらのアクションが自動的に行われれば、プランの成功確率はずっと高くなります。
Jennifer Mannはイリノイ州の20年間MDRT会員。Contact:jmann@lenoxadvisors.com。