自分の立ち位置は?
Matt Pais
in ラウンド・ザ・テーブル誌2024年3月1日

自分の立ち位置は?

MDRTが毎年実施しているベンチマーキング調査は仲間のパフォーマンスと比較することで改善が必要な分野を浮き彫りにします。

脆弱性を自覚することと、それに対して勇気を持って取り組もうとすることは違います。MDRTベンチマーク調査の結果、自分のオフィスは人員過剰だと知ったAurora L. Tancock, FLMI, CFPは最初動揺しました。

カナダ、オンタリオ州St. Catharinesで活躍する23年間MDRT会員のTancockは「効率を改善する余地があるとは思っていましたが、お客さまにお会いすることを最優先にしていたので、効率化に時間をかけていませんでした。クライアントとのことに集中し過ぎて、オフィスの内部を精査する余裕はありませんでした」と述べました。

しかし、TOT会議の分科会に参加したTancockはベンチマーク調査をカスタマイズする方法を学び、自分のオフィスと似た業態のオフィスと比較することにしました。225世帯のお客さまに対して75%はウェルス・プランニング、残りの25%が保険とリスク管理というビジネス形態に絞った調査結果と比較しました。それでも人員過剰という結果が出ました。

そして何とかしなければならないと自覚しました。当時Tancockのオフィスには本人以外に2名のアドバイザーがいて、4名のフルタイム・スタッフとひとりのパートタイムがいました。早速オフィス・マネージャーにそれぞれがどんな仕事を担当しているか、そしてトレーニングは十分に受けたか、受けている途中か、もっとトレーニングが必要かを報告してもらうことにしました。その結果、最近雇用した人たちは追加トレーニングが必要で、特にひとりは与えられた仕事をひとりでこなすことができず仲間に助けてもらっている状況で、できる仕事が少な過ぎると判明しました。また、人数的に余裕があるので仕事をしているもののアイドリングの時間があり、効率的に働こうという雰囲気に欠けていることも分かりました。ベンチマーク調査がなければTancockは自分のオフィスの状況を自覚することはなかったでしょうし、必要な改善をすることもなかったと思われます。

立ち位置を知る

  • 毎年実施されているこのアンケートはコート・オブ・ザ・テーブル会員とトップ・オブ・ザ・テーブル会員を対象に「部外秘」で実施されていて、自分のパフォーマンスを仲間やゴールと比較することができます。
  • 2023年に実施した調査には316名の会員が協力してくださいました。
  • アンケートに参加した会員は特別なポータルにアクセスすることができ、調査結果をカスタマイズして自分のビジネスに最も近い形態の方々と比較できるようになっています。


平均像


重要課題

今後5年間に直面するであろう最も重要な課題は右の3項目




2023年の主要投資分野

吸収合併


主要業績数値



業界ベスト

持ち株による収益のトップ25%は下記のパフォーマンスによるもの

  • 売り上げ増
  • 一人当たりの収益増
  • パートナー当たりの総報酬と事業利益
 

標準的パフォーマンス

業界ベスト

売り上げ増

8.2%

12%

経常収益

68%

69%

一人当たりの収益

$195,000

$300,000

一人当たりの利益

$75,000

$160,000

パートナー当たりのスタッフ

2

3

パートナー当たりの報酬と事業利益

$375,000

$745,000


知識の恩恵

すぐに変化を起こさない情報でも、じわじわと影響を与えることがあります。

ニュージーランドのクライストチャーチで活躍する5年間MDRT会員のTravis Maxwell Roche Hamiltonは大手住宅ローン会社の子会社としてそこからの紹介だけでビジネスを展開していたので、せっかく調査から得た教訓を実行に移す機会は限られていました。例えば、収益性が低くてもグループ内で収益が分配されるためHamiltonのビジネス・パートナーには必ずしも関係はありませんでした。また経費率を下げると、親会社から受ける紹介の対価が少なくなってしまいます。逆説的な言い方をすれば、高い収益を追求することはできるが、コストを引き下げることはできないということです。それでもこの調査のメリットを強く信じ、仲間を増やしたいと考えました。

Hamiltonのチームは彼以外に2名のアドバイザーがいて、2人のスタッフの支援を受けながら800世帯に保険、投資、住宅ローンを提供しています。グループ全体では13名のアドバイザーが在籍しています。「当社の理事会も同業他社と比較して私たちが顧客や収益面でどのような状況にあるかを私が把握していることに価値を見いだしています」と言います。正しい方向に進んでいて、毎年改善がみられるのはとても良いことです。

2023年の調査結果によると、ビジネスの規模や顧客数を考慮してHamiltonのチームのスタッフ数は適数で必ずしも人手不足ではないことが確認できました。また、スタッフの役割や事業の優先順位については他の事業所と同等だということを確認し、成長を過大評価する傾向があることを指摘されたことも励ましとなりました。

「昨年は自分を含めて私たちは少し楽観的過ぎました。来年の計画を立てるときには、成長目標はもっと保守的になるべきだということが分かって良かったです」と述べました。

初めて住宅を購入する顧客が多いため、一般的な事業所では新規ビジネスからの収益が42%のところ、Hamiltonのオフィスでは85%と非常に多い状況でした。同業他社は60%前後で推移しているので新規ビジネスへの依存が大きくなり過ぎないように、保有契約をかため、収入源を広げる必要があると認識しています。

さらに、前年の調査結果を参照したところ、スタッフの報酬を上げる必要性を認識し、取締役会の承認を得ました。Hamiltonは似た状況にあるアドバイザーに対して、30ページもある調査報告書の全文を取締役会に提示するのではなく、類似の事業所との比較分析をまとめることを勧めます。

「私はデータ分析や傾向を調べるのが好きなので調査結果を読み解くのに20~30分程度しかかかりませんでした。他の企業ではあまり行っていないようですが、当社は毎年業務評価を実施しているのでありがたく感じました。当社は当初、ニュージーランドでリスク管理をする同等規模の同業他社と肩を並べることを目指していました。しかし、現在は上位25%と肩を並べることを目標に掲げており、昨年の数字と比較すると順調に推移しています」と述べました。

変化を取り入れる

行動を起こすことがTancockにとって重要であることは分かっていました。期日を守れずにお客さまにご迷惑をおかけした業績不振のスタッフを解雇し、給与を引き上げて競争力を高めたことに加え、今では毎月のミーティングで効率改善のアイディアを提案することをスタッフに求めています。Tancockは以前よりチームにお礼を言うことが増えましたし、脈拍を測定するように毎日顔を出して様子を見ています。今までよりトレーニングを受けた人が安心して働ける環境になり、スタッフの役割分担も明確になりました。

「以前、私はいつも忙しそうな人と思われていて何か相談したいことがあってもスタッフは遠慮していたようです。今は以前より時間があるので問題があればいつでも相談に来て欲しいと声を掛けています」とTancockは述べました。「時々ベンチマーク調査を参照して、自分の立ち位置を確認します。現状はどうか知りたくなります。オフィス内の効率が悪いとせっかく素晴らしい業績があっても長期的な収益性では劣ることがあります」と注意を促します。

MDRTベンチマーク調査の詳しい情報やお問い合わせは jschimka@mdrt.org または njohnson@industryinsights.comまで

Contact

Travis Hamilton travis@tmxadvice.co.nz
Aurora Tancock aurora@atfs.ca

著者

Matt Pais

MDRT senior content specialist