私が今日トップ・オブ・ザ・テーブルのメンバーとして皆さんの前に立つことができるのはパラプランナーと一緒に仕事をしているからです。
パラプランナーという肩書きはある役割を説明するのに使います。英国ではこの職務をパラプランナーと呼びますが、違う名称でも問題ありません。パラプランナーとは金融サービスの専門家で、繰り返し行う定型化した業務や活動を引き受けることによりアドバイザーがお客さまに包括的なファイナンシャル・プランニングを提供するのを助けます。この人たちはファイナンシャル・プランニングの過程で重要な役割を果たします。調査や分析、資産配分の検討、財務モデリング、報告書の作成、顧客ファイルのコンプライアンス面といった業務をサポートします。これによりアドバイザーはお客さまとの人間関係や戦略の構築に集中することができます。
パラプランナーはお客さまとの面談に同席することもあります。これはアドバイザーにお客さまとの関係構築や面談の中身に集中する時間を与えるだけでなく、皆さんのビジネスとお客さまとの関係構築にも役立ちます。お客さまは皆さんのバックにいるチームの存在を認識します。パラプランナーは面談に参加することにより顧客ファイルの記入に携わることもでき、お客さまの置かれている状況を十分に理解した上でフォローアップ業務や活動を行う助けになります。
パラプランナーの主要な職務はファイナンシャル・プランをお届けするのに必要なすべての業務および調査をサポートすること、さらにアドバイザーがお客さまとの良い関係を維持するのを助けることです。詳細な調査とデータ分析を行い、金融商品の重要な側面を調べ、投資ファンドや場合によっては投資パフォーマンスを検討し、お客さまに関係するその他のデータや指標を把握します。またアドバイザーがお客さまに提出する報告書やプレゼンテーションを作成します。お客さまの生涯キャッシュフロー予測をまとめることもあり、新しいビジネスを実行に移す際には必要な書類を準備します。皆さんはパラプランナーのおかげで時間の余裕ができるので、お客さまとの関係構築や理想の見込客探しにもっと集中できます。
協働することの主な利点はルーティン・ワークの委託です。比較的時間のかかる業務をパラプランナーに任せることによってアドバイザーである皆さんはより多くの時間をお客さまやビジネスのために使うことができます。このことは個々のお客さまにより良いサービスを提供する助けになります。皆さんを支えるチームがいることを知ったお客さまはより多くの信頼を寄せ、結果として顧客エンゲージメントが向上するでしょう。
お客さまにとってパラプランナーはもう一人の連絡できる人になる可能性があります。皆さんが外出や面談で不在のときはパラプランナーがお客さま対応します。それにより人間関係が強化されます。もちろん時間の節約にもつながります。お客さまは聞きたいことがあるとき皆さんでなくパラプランナーやそれ以外のサポートチームに連絡するかもしれません。
また包括的で徹底した調査を行うことに貢献してくれます。パラプランナーは細かい点にまで注意を払うことができる人たちです。調査や分析が得意で、面談に必要な資料がすべて正確で最新であるようにします。またコンプライアンスや規制上の要件をすべて満たしているかも確認してもらいます。パラプランナーと一緒に仕事をするということは、顧客ファイルに見落としがないかを見直す第二の眼を持つのと同じです。
直感的に理解しにくいかもしれませんが、パラプランナーと組むことはコスト削減にもつながります。パラプランナーを雇うことは新しいアドバイザーを雇うより費用対効果が高いからです。お客さまの世話に手一杯だと感じてアドバイザーを雇って手伝ってもらいたいと考えているなら、必要なのはむしろ調査や報告書など時間のかかる作業を引き受けてくれるパラプランナーかもしれません。
またパラプランナーは御社の専門スキルにさらなる価値を与えてくれる可能性があります。皆さんを補うスキルを持っているかもしれず、協働することにより互いの弱点を補完することができます。
以上のことはライフ・ワーク・バランスの改善につながります。自由な時間が増えればより多くのお客さまと触れ合う機会を持つか、ビジネス以外の家族や友人と共に過ごすかを選ぶことができます。
パラプランナーの職務がアドバイザーへの足がかりになる人もいます。パラプランナーとして働くことは専門的な知識やスキルを身に付けるのに役立つと同時に、お客さまとの関係構築といったソフトスキルへの理解を深める助けになります。面談に同席させることはそのようなスキルを磨く上で非常に効果的です。
アドバイザーに転向したパラプランナーにお客さまの一部を引き継ぐことにした場合、これまで面談に同席していればお客さまと既に顔見知りになっているので引き継ぎは容易になります。全く面識がない人同士を引き合わせるわけではないからです。これはチーム内の後継者育成にも役立ちます。現場にいるメンバーを採用する機会があれば引き継ぎがスムーズになります。というのも現在、金融サービス業の採用は簡単ではないからです。しかしパラプランナーにアドバイザーの仕事をさせてみてその職に就くことを望むのであれば、事務職の人材をパラプランナーに転向させることもできます。事務職に別の人を配置することにより、チーム全体の後継者育成は前進と発展の機会を得るでしょう。
パラプランナーは深い専門知識を持っていることが望ましいです。お客さまの置かれている状況を理解し、把握し、何をしてあげられるのかを理解できるようにするべきです。また分析能力も必要です。調査や分析を行うことになるので細部にまで気を配れることが重要です。口頭だけでなく文書でのコミュニケーション能力を持っていることが期待されます。クライアントのために報告書を書く場合は、専門用語を避けてお客さまが理解しやすいようにしてください。
パラプランナーが面談に同席するときは黙って隅に座っているのではなく、お客さまとやり取りに加わってもらうべきです。アドバイザーへの道を歩むのであれば対人スキルが必要になるからです。ITに精通していることも必要です。調査や報告書の作成にはAIやその他のテクノロジーを使うので、技術を最大限に活用する方法を知っていなければなりません。
もうひとつパラプランナーに獲得しておいてほしいのは資格です。英国ではパラプランナーになるための規制や資格はありませんが、私は資格を得ることが重要だと感じるので弊社のパラプランナーには全員この業界の資格を持たせています。資格といってもお客さまを手助けするためにアドバイザーが取得するような資格です。
現在パラプランナーを使っていないなら、どのようなプロセスにするのかじっくり検討してください。お客さまとどのように仕事をしてほしいですか?どのようなフィードバックがほしいですか?お客さまにどのように報告してほしいですか?プロセスは必ず文書化してください。そうすればどのお客さまに対しても一貫したアプローチを取ることができます。チームメンバーを追加したりメンバーに新しい役割を与えたりするのも簡単になります。プロセスの見直しもきちんと行いましょう。今うまくいっていることが、後々うまくいかなくなるかもしれません。新しいパラプランナーがプロセスの運用の仕方について意見を述べる場合、話をよく聞いてください。提案を理解し受け入れる姿勢を持ちましょう。結局そのプロセスに従うのはパラプランナー自身です。
また自分の強みと弱みをしっかり把握することです。チームのメンバーにはそれぞれ異なる長所と弱点があるので、それを考慮した上で仕事を任せます。一人ひとりの強みを賢く活用してください。ワークフローやタスク管理だけでなく分析や報告にもソフトウェアなどのテクノロジーを取り入れ、業務効率化を図りましょう。
活動リストの見直しも行ってください。活動リストで確認し委任した項目は、時間の経過とともに変化するものです。人に任せることに慣れてくれば委任したい他の業務も見えてきます。パラプランナーにも同じことをしてください。パラプランナーが仕事に忙殺されていたら活動リストを見直してください。他の人に委託できる仕事はありませんか?ルーティン・ワークを軽減するために事務職を雇い、パラプランナーが綿密な調査や報告書作成に時間を割くようにしますか?
もちろん物事が常にうまくいくとは限りません。十分に準備し、あらゆる業務を文書化したつもりでも、問題が生じることがあります。困難をチャンスと見なすことが重要です。皆さんが進歩し、より効果的に協力し合う良い機会です。問題の多くは伝える側と受け取る側の認識の相違によって起きるので、ミスコミュニケーションにはすぐに対処してください。問題をこれ以上悪化させないようにしましょう。
皆さんやパラプランナー、チーム全体にとってどのような情報伝達が望ましいのか把握してください。皆さんはやってほしいことをただ口頭で伝えたいかもしれません。しかし、チームは後で参照するためにメールで送ってほしいと思っているかもしれません。食い違いの原因となることを避けるため両者にとって望ましい方法を探し出し、良い仕事を効果的に完了できるようにするべきです。同じくらい重要なのはパラプランナーが皆さんに適切な質問をしているかです。皆さんから必要な情報を得ていますか?明確な指示を出していますか?憶測でものを言っていませんか?十分な情報を与えていますか?
書類の不備があったときにパラプランナーが指摘してくれるのは有り難いものです。不足している情報があるかもしれません。コンプライアンス・ボックスにチェックを入れ忘れているかもしれません。指摘されて気を悪くしないでください。お客さまに最善のサービスを提供するために必要なことです。
もう一つの課題は人材を十分に活用していないケースです。パラプランナーに限られた種類の仕事しか与えていないことがあります。「この仕事は任せられない。あの人には負担が大きすぎる」と思いこんでいませんか。頼むのを控えることもあります。パラプランナーは信頼されていないからその仕事を任せてもらえないのだろうと捉えるかもしれません。仕事を与えすぎてパラプランナーが手一杯になるのを避けると同時に、できるわけないと決めつけないようにしましょう。その人にどれ位の能力があり、どの部分で助け合えるか明確にしてください。「教える時間がないから自分でやってしまおう」という罠に陥らないようにしてください。
変化に対する抵抗も起こり得ます。皆さんが行っているお客さまとの仕事の仕方にパラプランナーは違和感を覚えるかもしれません。別のアドバイザーのもとで働いていたことがあり、そこでは異なるやり方をしていたのでしょう。ですから解決に向けて一緒に取り組むことが必要です。変化に抵抗があるのは皆さんの方かもしれません。パラプランナーを雇い仕事を任せることに戸惑っているのかもしれません。適切なコミュニケーションを持てば問題がどこにあるのかを理解することができます。役割や責任を明確にしてください。曖昧さは混乱につながります。物事が重複することにもつながります。誰が何をするのか明確でなかったため、パラプランナーがやった仕事をもう一度やってしまうかもしれません。また何かをし忘れたり時間を無駄にしたりすることがないように注意したいものです。各自が自分の役割に徹し責任を持つことが重要です。メンバーに対する過度の干渉は止めましょう。これが問題になることもあります。パラプランナーは自分が信頼されていると感じる必要があります。