株式市場の低迷を話題にしたがるクライアントはほとんどおらず、良い時代がずっと続くと信じたい人が多過ぎます。1990年代後半に株価が上昇し、経済学や収益に関する古い法則が無視された時代もそうでした。当時企業に求められたのは優れたアイディアだけでした。経済理論の誤りを証明したのがドットコムの大暴落でした。いずれ起こる株式市場の下落に備えていただくため、私たちはどう行動すれば良いのでしょうか。
「馬が逃げてから馬小屋の戸を閉める」ということわざ(起こったことは取り返しがつかないの意味)を聞いたことがあるでしょう。アドバイザーは反応するのではなく、先手を打ちたいものです。顧客と連絡を取り、先を見越して動きましょう。顧客に「どれだけの損失があったか確認するまで分かりません」という電話はしたくありません。先を見越すためには定期的な見直しから始めます。
1. 定期的な見直しを実施する。顧客が株価を注視していると思い込んではいけません。ある方が1株10ドルで買った株が100ドルまで上昇した後、10ドルまで下がったとします。所有する株の価値は一時的に上がったものの、やがて元の価格に戻ってしまいました。顧客が投資先を注視していると思わないこと。誰かが責任を負う必要があります。定期的な見直しで顧客の注意を喚起し、株の運用成績に影響を与えそうなニュースを知らせてください。そうすれば顧客はあなたの付加価値に気付きます。顧客の注意を引きつけ、ポートフォリオが好調であればより多くの投資資金をあなたに預けるでしょう。
2. あなたのせいではなくても責められる。投資成績が好調なときに一緒に投資ポートフォリオを見直すのは素晴らしいことです。顧客は定期的に見直す習慣ができます。ところが残念なことに何かうまくいかないことがあると、人は誰かを責めたくなるものです。資金を失えば、あなたが何とかすべきだったと考えます。ポートフォリオの見直しと定期的な連絡で、あなたと顧客が同じ側にいることをはっきりさせましょう。投資信託の運用成績を精査する際には、ファンド・マネジャーを評価し、今後も同じ人に任せるのか、変えるべきかを一緒に決めるのです。両者は敵対するのではなく協力関係にあるべきです。
3. 過去に目を向ける。過去の運用成績は未来の運用成績を保証しないことはよく知られています。皆さんも資格試験の勉強をしたときに、投資信託にまつわるこの真理を学んだはずです。また「歴史は繰り返す」や「過去に学ばない者は、過ちを繰り返す」という表現もご存じでしょう。顧客との付き合いが長年に及ぶのであれば、過去の不況期を振り返ってください。その当時何を学びましたか。また、こうすれば良かったと思うところはありますか。
顧客が投資先を注視していると思わないこと。誰かが責任を負う必要があります。
4. 業績を把握する。顧客は高値の時点から損失を測る傾向があります。1株10ドルで買った株が100ドルまで上昇し、その後50ドルまで下落したとしましょう。1株10ドルの取得価額と比べればもうかっているにもかかわらず、顧客は100ドルからの損失だと捉える可能性が高いです。アドバイザーはクライアントに現実を見せる必要があります。例えるなら、顧客は金融ポートフォリオを携えて船に乗っているようなものです。船に目的地があるように、顧客には経済的な目標があります。大事な目標は旅の途中だけでなくずっと先に株式の価値が高まることです。10ドルだった株が現在50ドルであれば正しい方向に向かっています。株式調査部がそれは違うと言うまで、経営陣の定めた方向性を信じ続けましょう。
5. 資産配分のバランスを定期的に見直す。「安く買って高く売る」べきだと皆が知っていますが、実行する人はほとんどいません。高値で買うのは大勢が買うからであり良いニュースがあったからです。安く売るのは世界で異変が起きたからです。「今回の異変は特に深刻だ」と思うから怖くなって売るのです。アドバイザーはリバランスでこの問題に対処できます。株式市場が上昇すると、資産配分における株式の割合が高くなります。ポートフォリオのバランスを取り戻すには、株式から資金を引き揚げて債券や現金に再配分する必要があります。高値で売るとはこういうことです。
6. 資金をどこへ移すべきか。株式市場の下落を一言で説明すれば、買い手よりも売り手が多い状態です。売り手はどこに資金を置くのでしょうか。S&P500を500企業が入ったカゴと考えると簡単です。カゴの中にはセクターと呼ばれる産業別の小さなカゴが11個入っており、小さなカゴごとに異なるリターンをもたらします。インデックス全体が15%下落しているにもかかわらず、1つか2つのセクターが1%の下落にとどまるか、わずかに上昇している場合、それが次のマーケット・リーダーの可能性があります。本社のアナリストのアドバイスに基づき、アドバイザーは顧客にこうした新興セクターの株式に新たに投資するよう勧めるかもしれません。
7. トータル・リターンの高い銘柄。顧客は長期的な株式投資が短期的な取引を上回ると信じています。現在横ばいか低迷している市場がすぐには上昇に転じそうになければ、トータル・リターンの高い銘柄が理想的な投資対象かもしれません。これは長期にわたって配当金を支払ってきた実績のある企業の株式です。顧客はこのような優良企業の株式を購入し、市場の回復を待つことで収益を得られます。
8. 安値買いを魅力的に見せる。数年前の調査で、国民は国会をあまり評価しない一方で地元議員を高く評価しているという結果がでました。この傾向は投資家にも見られ、株式市場全体には弱気だがポートフォリオの特定銘柄がお気に入りという方がいます。好きな銘柄について話してもらいましょう。今が買い増しのチャンスかもしれません。
9. 元本保証はあるか。保険はビジネスのもうひとつの側面です。保険商品には「保障」や「安心」といった言葉がつきものです。株式市場が好調なときにそこから資金を移し、元本保証・有配当型の保険商品に加入することをクライアントに検討してもらいませんか。
誰もが株式市場の高騰を望みますが、一直線に上昇するわけではありません。エスカレーターのように徐々に上昇することもあれば、エレベーターのように急降下することもあります。顧客とコンタクトを取り、懸念に耳を傾けて先手を打ちましょう。このようなアドバイザーの働きかけで顧客は株式市場の下落を乗り切ることができるものです。
Bryce SandersはPerceptive Business Solutions Inc.社長。金融サービスの専門家に富裕層クライアント獲得のトレーニングを提供している。著書の“Captivating the Wealthy Investor”はアマゾンで購入できます。Contact: brycesanders@msn.com