お客さまは言葉には出さずとも皆さんの提案に乗り気でないことを伝えていることがあります。ここで相手にお構いなしに話を進めてしまうといつまでたっても賛同を得られません。言葉にされないので、お客さまが混乱していたり、疑問を持っていたりすることに気付かずにいるかもしれません。非言語コミュニケーションを理解することで、お客さまがブレーキを踏むタイミングを見極めることができます。
「ほとんどのコミュニケーションは無言で行われます。相手のイエスを引き出すためにボディー・ランゲージを読み解く力が必要だと学びました」と、米国アリゾナ州Scottsdaleの20年間MDRT会員のAlan C. Kifer, CFP, LUTCFは言います。
非言語的手掛かりを理解することでアドバイザーは話のペースを調整し、お客さまの状況に合わせることができます。またこれにより信頼が高まります。
ボディー・ランゲージによるサインを見逃すのは、会話の重要なポイントを見逃すことと同じです。
「ボディー・ランゲージを読み解くには、まず相手に質問し考える時間を与えます」とElke Rubach, LL.M., CLUは言います。「オンライン会議で人がスクリーンを見つめたり、目を細めたりし始めるのは、混乱しているサインです。また、椅子の背にもたれかかったり深々と沈み込んだりして座るのは、話が複雑すぎることを示しています。いったん中断して話を遡り、別の伝え方をする必要があるかもしれません」と、カナダ・オンタリオ州トロントの6年間MDRT会員のRubachは言います。
カップルと話す場合は両者の非言語的手掛かりに注目します。「どちらかが理解できていない様子であれば、そこで話を中断し『何か質問はありますか。私の説明で分かっていただけましたか』とお尋ねします」
ボディー・ランゲージによるサインを見逃すのは、会話の重要なポイントを見逃すことと同じです。
Kiferはあるご夫婦との3度目の面談での経験を話してくれました。あるプランに興味を示していましたが契約には至っておらず、おふたりが足踏みする理由が分からずにいました。Kiferが介護費用の解決策について話したとき、奥さまが腕を組んで防御の姿勢を取ったことに気付きました。そこで話を中断し彼女に「長期介護でとても大変な経験をされましたね。あなたやご主人にも同じことが起こらないとは言い切れません。そうならないために介護費用の問題に解決策が必要だと思います。介護に関わる人や場所など、あなたが希望するケアを受けられれば、不愉快な状況を避けられます。保険のことよりもまずこの点について話をしませんか」と伝えました。この切り替えにより面談の雰囲気が一変しました。
「彼女は急に腕組みをといて椅子に座り直し、話をしたいことがあるとおっしゃいました」とKiferは述べます。
これはボディー・ランゲージを理解することが家族の問題解決にいかに役立ったかを示しています。相手の出すサインを察知してそれに応えることで信頼関係を築くことができます。つまりお客さまと同じ目線に立つことになります。
関係を築く
関係を築くには特定の言葉を正しく組み合わせて話すだけでは不十分です。言葉をどのように発するのか、そしてどのように身体を使って表現するかが大切です。
「人はお互いに信頼関係を築きたいと強く思っています」と語るのは、英国Shrewsburyの6年間MDRT会員のEdward Franklin Marshall, APFSです。「本人がその思いを意識して認めているかは別ですが、人は少なくとも居心地の良しあしを感じたり、信頼できそうな人とそうでない人を判別したりしています」と言います。Marshallは信頼関係を確立するために以下のテクニックを推奨しています。
身体的ミラーリング。「人の身体の動きはコミュニケーションの55%を占めます。お客さまの姿勢、表情、手ぶり、動き(まばたきやアイコンタクトを含む)をまねすることで、ミラーリング効果(親近感の演出や心の距離を近づけること)が期待できます」と言います。
さらに、お客さまが背もたれにもたれているか、前のめりになっているかなど、座り方もまねます。
「ジェスチャーをする人がいたらそれもまねします。おとなしくて内向的な人には、身ぶり手ぶりを抑えることで安心感を持ってもらえます。これにより相手の体が無意識に『この人は自分と同類だ。気に入った』とマインドに伝えます。神経系はこれを否定することはできません」とMarshallは言います。
声を同調させる。お客さまの声のトーン、テンポ、音色(声質)、声量をまねることです。大きな声で話すのか、早口なのかゆっくりなのか、また抑揚を付けて話すかどうかに注目します。「お客さまの声に同調すると心地よさを感じていただき、より効果的に繋がることができます」と述べます。
呼吸を合わせる。Marshallによれば、呼吸のペースを合わせることも関係を築くために効果的です。ただし文化が異なればボディー・ランゲージの意味も異なることを忘れてはいけません。異文化を持つお客さまに対応する場合、ボディー・ランゲージやジェスチャーがどんな意味を持つのかを学んでください。Kiferはジェスチャーが原因で、不注意にも他国のお客さまの気分を害してしまった経験があります。
さらに本を読んでリサーチすることをお勧めします。ボディー・ランゲージを正確に読み解けるようになるには時間がかかります。このスキルを磨くには、自らが適切なボディー・ランゲージを使い、相手のボディー・ランゲージが何を伝えているのかを確認していくことです。
推薦図書
- “What Every Body Is Saying: An Ex-FBI Agent’s Guide to Speed-Reading People” (身体が伝えてくれること: 元FBI捜査官のスピード読心術)Joe Navarro著
- “You Can’t Lie to Me: The Revolutionary Program to Supercharge Your Inner Lie Detector and Get to the Truth”(私に嘘は通じない:内なる嘘発見器を強化し、真実を見抜くための革命的プログラム) Janine Driver とMariska van Aalst著。Driverは2023年MDRT EDGEの講演者で、mdrt.org/decode-the-new-body-languageのビデオで紹介されています。
- “How to Read People Like a Book: A Guide to Speed-Reading People, Understand Body Language and Emotions, Decode Intentions, and Connect Effortlessly”(本のように人を読み解く方法: スピード読心術で、ボディー・ランゲージと感情・意図を理解し、楽に人と繋がるためのガイド)James W. Williams著
ボディー・ランゲージのヒント
- 腕と足を組む。当てはまらないこともありますが、保身、怒り、自己防衛を示します。寒いときに腕を組む人もいます。人によって座り方の好みもありますが、女性はスカートやドレスを着ているときに足を組むことが多いです。常に状況を把握してください。
- お互いの距離。一般的に、人は好きな人との距離は近くなり、そうでない人からは距離をとります。
- 手を隠す。人が手を膝の上に置いたりポケットに入れたり、背中に回したりするのは、何かを隠している可能性があります。
- 唇を噛んだり、爪の甘皮をむしる。プレッシャーを感じたり、気まずい状況にいる自分を癒やそうとしたりしていることが多いです。
出典:Psychology Today
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