Aurora L. Tancock, CFP, FLMIには、より良い雇用機会を求めて南イタリアの小さな町から何カ月も、時には何年も出稼ぎに行く父親にさよならを言った子どもの頃の記憶が今も残っています。Tancockが12歳のときには、家族4人でカナダのオンタリオ州Thoroldに移住しました。そこで変化を乗り越えることができた経験は彼女の人格形成に重要な役割を果たしたと言えます。この経験のおかげでキャリア半ばで不安と失望に満ちた変革に直面しても、経済的な成功と充実への道を進み続けることができたのでしょう。現在23年間MDRT会員のTancockは9月1日の新年度からMDRT役員会の事務局長に就任する予定です。
初期の教訓
父親から教わった最初のファイナンシャル・プランに関する教訓は「稼いだだけ使ってはいけない」というものでした。カナダに移住した当初の両親は給料日が待ち遠しいほどギリギリの生活を切り盛りしていましたが、ある時ようやく住宅ローンを完済したことで不安な生活から解放された安堵感とともに静かに祝う両親の声を耳にしたことを覚えています。その後、Tancockの両親はコツコツ貯めた余剰資金を収入を生む賃貸物件の購入に充て、父親は58歳で引退し、穏やかな老後を過ごすことができています。Tancockにとっては働き者の両親を見てきたことが一番の教えとなりました。
Tancockもティーンエージャーの頃から小売店でアルバイトをし、高校卒業後の夏休みはプルデンシャルでファイリングの仕事を得ました。短期間の仕事と思っていましたが、Tancockのキャリアの踏み台のような役割を果たす経験となりました。次第に責任のある仕事を任されるようになった彼女は持ち前の好奇心と学習意欲からLife Management Instituteのフェローコースを受講して保険と金融サービスについてさらに学ぶようになりました。3年もしないうちに事務部門のマネージャーに昇進し、他のマネージャーのトレーニングや新しいテクノロジーの導入を担当しました。その後も一緒に働くアドバイザーを理解するために勉強を続け、投資信託を販売するライセンスを取得しました。
アドミからアドバイザーへ
仕事は本当に楽しく、ずっと事務職を続ける道もありました。しかし、当時はさまざまな保険会社が吸収合併を繰り返していたのでキャリアの将来性は会社次第という不安も感じていました。アドバイザーの役割を理解するために何年も勉強していたため、ファイナンシャル・アドバイザーへの転向は有利でした。「前職で身に付けたスキルがいつ役立つかは分かりません。私の場合は事務関係のスキルを学ぶと同時にビジネス全体についての知識を得ていたことも役立ちました」意を決したTancockは金曜日に事務職を辞し、翌週の月曜日からアドバイザーとして働き始めました。
本当は怖かったと言います。「人生で始めて固定給のない仕事に就いたからです。夫はガス会社で営業をしていて彼も歩合制でした」
10代の息子2人の大学進学資金の貯蓄に追われる中、25年間勤めた管理部門の安定した収入を捨て、セカンド・キャリアをスタートさせたのです。家族を重視した働き方をしながらお客さまに包括的なアプローチをとり、十分なファクト・ファインドを行った上でファイナンシャル・プランを提案していました。しかし見込客は投資よりも生命保険や所得補償保険への加入に興味があることを感じていました。「投資の場合、お客さまは私という人間を買います。まだ新人だった私が長続きするのかを確かめたかったのだと思います」と当時を振り返ります。初期に彼女がターゲットにしたのは住宅ローンを抱えている方々でした。つまり定期保険のニーズがあるからです。「当初はニーズがあればどんな商品でも販売しました。その次にその他のニーズとして何を求めているか、それは子どもの教育費用なのか、リタイアメントなのかなどを相談していただけるような信頼関係を築いていきました。最初は生き残るために必死でした」
「MDRT語が通じます」
Tancockの頑張りの結果、アドバイザーに転じた翌年、2000年12月の最終週にギリギリでMDRT入会基準を達成することができました。MDRTとの最初の接点は1985年度MDRT会長を務め、カナダ、オンタリオ州トロントで活躍していたRon D. Barbaroのオフィスを訪問したときに見た「MDRT語が通じます」のポスターでした。60年来のMDRT会員であるBarbaroは、このスローガンは改善を追求するために世界に手を差し伸べるべきだという会員への挑戦だと説明しました。世界的な会員コミュニティとしてのMDRTのパワーを示す言葉でもありました。
入会1年目にして、比較的近いトロントで開催されるアニュアル・ミーティングに出席することを決意したTancockでしたが、当初は少し場違いな感じがしました。コート・オブ・ザ・テーブルやトップ・オブ・ザ・テーブルを達成した人たちの中で、「自分はここにいてもいいのだろうか」と思っていました。でも誰かが「同じMDRT会員じゃないか、仲間だよ。一緒にコート・オブ・ザ・テーブル、次にトップ・オブ・ザ・テーブルを目指そう」と言ってくれました。初参加者のグリーン・バッジのおかげで、食事に誘われたり声をかけられたりしたので質問ができるようになるのにそう時間はかかりませんでした。「自分はトーテムポールの一番下にいることを自覚させられました。まだまだ上を目指さなければいけないと感じました。そして、その年は年末を待たずにMDRTの入会基準を達成すると誓いました」
2回目のアニュアル・ミーティングではPGAボランティアに参加したので、さらに多くのMDRT会員と交流することができました。ある会員は、高水準の成績を上げているMDRTの友人たちとのディナーに誘ってくれました。やがて英国イングランドMiddlesexで50年間MDRT会員のLeonard Samson, Cert PFS, FLIAがTancockのメンターとしてコート・オブ・ザ・テーブルを達成するように励まし続けてくれました。初めてCOTを達成したとき、Tancockは真っ先に恩師に報告しましたが、彼からは「OK、次はトップ・オブ・ザ・テーブルだ」という返事で、その後も応援し続けてくれました。
MDRTとの関わりから影響を受け、Tancockはより効果的に仕事をする方法を編み出していきました。ビジネス・ネットワーク・インターナショナルに加入し、地元の住宅ローン・ブローカー、弁護士、投資アドバイザーとペアを組み、影響力のある紹介者を確保しました。彼らとは定期的に会い、互いにビジネスを紹介し合いました。しかしビジネスに必要な素晴らしい機会を得ることができた一方で、家族と過ごす時間が犠牲になっていました。当時はほとんどの顧客の自宅を訪問していたので、平日の夜、家族との夕食後に面談に出掛けることが多くありました。MDRTのホールパーソン・コンセプトを思い出した彼女は、家族を大事にするという柱を中心に仕事をするというスタンスに変えていきました。また、地元のロータリークラブに入会して社会奉仕活動に参加し、同クラブの理事も務めました。Tancockは完璧を望むことをやめましたが、短期的にはともかく、長期的にはバランスが取れるようになりました。「家族が最優先のときもあれば、仕事を優先しなければならないときもあります。その両方をしっかり確保していれば、その週や月という単位で多少バランスが崩れても大丈夫だと学びました」
ターゲットを変える
バランスをとることはクライアントとの仕事でも重要な側面となりました。ファミリー・マーケットに照準を合わせていたころはお客さまは何を望んでいるのかを聞き出し、ファイナンシャル・ゴールを特定し、ファイナンシャル・プランという形で提案を行っていました。お客さまがこれまであまり語ることのなかった夢や希望について話をしてくださることや、その夢の実現に自分が関わるという大事な役割が大好きでした。「人は忙しいものです。ご夫婦にゆったり座っていただき、夢やゴールを問い掛けると、そんな話題を話し合うのは初めてという方もいらっしゃいます」Tancockはお客さまに育てられたと感じています。そして、次第にフォーカスをリタイアメント・プランと資産税対策へとシフトしていきました。
当初からのお客さまはそろそろリタイアする時期に来ていますが、Tancock自身はまだそのジャーニーに同行するつもりはありません。とはいえAurora Tancock Financial Servicesの今後を見据えて2人の継承者をパートナーに加えました。2022年1月にはMDRT Academyを卒業したReyam Abdulridha, QAFPが、そして2023年にはSashia Veerman, CFPが加わりました。2人とも現在MDRT会員1年目で、今後5年間をかけた事業買収を予定しています。オフィスの日々の仕事を2人が引き継ぎ、Tancockは約50名のトップ・クライアントだけにフォーカスします。
この事業継承プランのおかげでMDRTの重責を果たすことも可能になります。ジャーニーの次のステップが楽しみでしかありません。MDRTの将来計画に関わり、貢献できることは本当に名誉なことです。「私はこの組織について学び続けるつもりです。MDRTの奥深さと広さを知るために、学ぶべきことはまだまだたくさんあります。MDRTのおかげで人として大きく成長することができました。この役割でどこまで成長できるのか、想像すらできません」
Tancockの人生を貫いているのは、クライアントのため、同僚のため、家族や友人のために正しいことをすれば、素晴らしいことが手の届くところにやってくるという信念です。ガーデニングをリラックスと喜びをもたらす趣味とする彼女は「私は種をまいています。どこで何を収穫できるか分からないけれど、収穫が楽しみです」と語りました。
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Aurora Tancock aurora@atfs.ca