健康状態に関するFitbitアプリの評価から学校の中間テストの成績まで、私たちは好むと好まざるとにかかわらず常にフィードバックを受けています。そのため優れたチームを導き育て、お客さまと良好な関係を築き、仕事と地域に大きく貢献する能力はフィードバックをどう扱うかに左右されます。他者の目を通して世界を眺めフィードバックを受け入れることができるなら、リーダーとしてもホール・パーソンとしても成長を後押しする素晴らしい機会となります。
詩人で哲学者のHenry David Thoreauは「一瞬でも相手の目を通して見ようとすること以上に素晴らしい奇跡があるだろうか」と言いました。20世紀の最も偉大な経営学者のひとり、Peter F. Druckerはフィードバックの基礎として客観的なデータが使用されれば、ネガティブで感情的な反応を和らげることができると考えました。悪い知らせでも客観的な基準を当てはめることでポジティブに解釈することができます。
アドバイザーは時として不利な引き受け査定結果や予想を下回る投資結果といった悪いニュースを伝えなければなりません。しかし引き受け基準や投資リターンの妥当な範囲など客観的な期待値が事前に共有されていれば、ネガティブなニュースにとらわれることなく前進するための代替案に焦点を当てて会話をすることができます。
伝統的なフィードバック・ループ(訳注: フィードバックを活用し改善を繰り返していくこと)は事前に合意した目標の進捗状況をデータで測定するため、活動は「できている」「できていない」「十分にできていない」のいずれかに評価されます。また優れたループにはフィードバックを受けたときに自分の欠点に気付く十分な自己認識と、他者にフィードバックを提供する機会が必要です。
フィードバックの操縦術を金融サービス業の成功と維持に必要な論理的なステップ、つまりループに分解してみましょう。
見込客探しのループ
このフィードバック・ループは皆さんのクライアントが知っている彼らとよく似た特性をもつ人たち、つまり理想的なお客さまについて話題にすることを意味します。見込客探しの目的は皆さんのお客さまパイプライン(供給経路)に単に見込客の名前を追加するのではなく、適切な名前を追加することにあります。見込客探しから得られるフィードバックは彼らの価値観、姿勢、能力に関する情報です。そのような情報は公的な記録や個々の観察あるいは見込客と話すことによって見つけることもできますが、最も良い方法はそのターゲットを直接的・間接的に知っている人に聞くことです。理想的なお客さまに求める資質や属性を明確に理解することがフィードバック・ループには不可欠です。見込客の名前がパイプラインに入ってきたら理想的なお客さまに求める属性と照らし合わせて評価してください。見込客について詳しく知るにつれ、そのフィードバックは実際に会って固定客へと転換させる取り組みの原動力となります。
見込客探しから得られるフィードバックはお客さまの価値観、姿勢、能力に関する情報です。
ファクト・ファインディングのループ
お客さまに適切な質問をすれば皆さんが知りたい情報を全て教えてくれます。質問のカギとなる分野は期待に関する問い掛けです。お客さまが何を望み期待しているかを収集することで適切な提案を考え、客観的基準を作成することができます。ファクト・ファインディングを「お客さまにとってお金はなぜ重要ですか?」という質問から始めてください。この自由回答形式の質問によって多岐にわたるフィードバックが得られ測定の対象となるあらゆる期待値の把握に繋がる可能性があります。
ケース設計のループ
ファイナンシャル・プランや一連の戦略を策定するときはファクト・ファインディングで得られたフィードバックを念頭に置いてください。お客さまの期待は各提案に明確に記載するべきです。客観的な基準を提示し結果を数値化することによりフィードバック・ループをプランに組み込むことができます。最良の提案はお客さまから受けたフィードバックに基づく、測定と報告を伴う結果に結び付いています。
プレゼンテーションのループ
お客さまとの最も効果的な対話は、フィードバックをいただくときに生じます。ギリシャの哲学者ソクラテスはしばしば創造的で考えさせる質問を使って聴衆にフィードバックをさせ、自分が説得する行動が聴衆にとって最善であるという結論へと導きました。ソクラテス・メソッドでお客さまに皆さんの提案の必然性を理解させましょう。まず発見フェーズでお客さまが話した目標について列挙することから始めてください。その内容に間違いないかを確認し、明確な土台を作ってオープンな意見交換ができるようにします。次に戦略の要点を質問の形でプレゼンテーションしてください。このアプローチにより肯定的な反応を得るか、合意が得られるまで質問と答えを繰り返すことになります。例を挙げましょう。
「お客さまの最も重要な目標は退職後にやりたいことを何でもできる十分な収入を得ることでした。このプランでそれができると思いますか。投資市場は予測可能で残りの人生に十分で安定した収入をもたらすと思いますか」
「収入にある程度の保証をつけることはお客さまの勇退戦略に合っていますか。承認していただければ収入が途切れない保証をつけ、お客さまが亡くなっても奥さまを支え続けることができるようにできます。お二人が亡くなった後にお金が残っていれば相続人に支払います。これはお客さまの戦略に合っているでしょうか」
この段階で商品を紹介し、お客さまの目標とどのように合致するかを説明します。この2つがうまく結び付くと、お客さまはあたかも自分が考え出したプランのように感じます。
感謝と称賛のループ
詩人で公民権運動家のMaya Angelouは「人はあなたが言ったことや行ったことを忘れますが、自分たちをどのような気持ちにさせたかは決して忘れません」と言いました。人は自分が知っている人、好きな人、信頼している人とビジネスをするという有名なビジネス原則があります。つまりKnow(知る)、Like(好き)、Trust(信頼)は人間関係のフィードバック・ループで測定する重要な要素です。見込客探しとファクト・ファインディングのループにはお客さまの好みや趣味に関する多くのデータが織り込まれています。お客さまと生涯にわたる信頼関係を築く際、この知識を効果的に活用してください。
お客さまサービスのループ
このループは4つの基本的な要素で構成されています。全てのお客さまは4つの行動を期待しており、実践しないと皆さんが一生懸命築いてきた関係が台無しになってしまいます。この原則は人間関係を強化するだけでなく、お客さまを皆さんの熱心なチアリーダーにします。自身の効果性を測定するための客観的なデータポイントを設定し、以下の4つを行う能力について自己フィードバックを行ってください。
- アポイントメントの時間を守る-時間は世界で最も貴重な資源で再生することができず一度使ったら交換することも元に戻すこともできません。皆さんは単にアポイントメントに時間通り現れるだけでなく精神的にも準備を整え、タイムリーな情報を携えて行くようにしましょう。
- やると言ったことは実行する-頼もしくて信用できる人になってください。
- 始めたことは最後までやり遂げる-活動のループは計画的に終わらせましょう。
- 「お願いします」「ありがとうございます」を言う-お母さんの教育は正しかったのです。
保障内容見直しのループ
定期的にプランを評価することはアドバイザーの最も重要な約束事のひとつです。私たちの年次レビューの目標は望ましい結果を提供する能力があることを示すことです。しかし条件や状況によっては目標を達成できないこともあります。そのためレビュー会議で重要なのは耳を傾け期待を再検討することであり、それを怠ると年次レビューのループが崩壊し人間関係がぎくしゃくしてしまいます。お客さまが怒りをあらわにすることもあるでしょう。その痛みを貴重なフィードバックかつ人間関係のループの一部として受け入れるなら、お客さまは皆さんが話を聞き、自分のために問題解決に取り組んでいることを尊重し、問題解決に前向きになるでしょう。フィードバックを積極的に受け入れる気持ちがあれば、見直しは皆さんにより多くのチャンスを与えてくれます。
紹介のループ
全てのフィードバック・ループはこの金のガチョウに繋がるよう意図されています。見込客探しのときに理想的な顧客像に適合する人の特徴をどのように探しあてたか覚えていますか。見込客の供給源として既存顧客の紹介に勝るものはありません。このフィードバック・ループの最初のステップは皆さんが期待に応えた、あるいは期待を上回ったとお客さまに評価してもらうことです。またお客さまがプライベートと仕事で誰と付き合っているかを下調べします。普段の観察やソーシャル・メディアを利用して調査してください。お客さまから肯定的な評価を得られたら、紹介してほしい人の名前をあげて紹介されるのを待ちましょう。
包括的で思いやりのあるフィードバックが循環する論理的なビジネス・モデルを構築するなら、人生はストレスの少ない幸せで成功に満ちた日々になるでしょう。グッドラック。
Thomas Levasseurはニューハンプシャー州Doverの35年間MDRT会員。Contact: tom@thebeaconfg.com