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自身のマーケットを極める
自身のマーケットを極める

7月 01 2024 / Round the Table Magazine

自身のマーケットを極める

ニッチ市場で唯一無二の存在になる。

対象のトピックス

自分のニッチ分野を明確に定義し、精通することでビジネス目標が鮮明になり、ターゲット市場のオピニオンリーダーとしてお客さまとの関係を深めることができます。専門家、リソース、問題解決者になることで自分のビジネスや自分が仕える顧客層にどのような違いが生まれたのか、数人のMDRT会員にシェアしていただきました。

専門分野を見つける

スペシャリストとして成功するにはニッチ市場を選び、クライアントが重要視している課題について競合相手より多くを学ぶ必要があります。ニュージャージー州Fairfieldの20年間MDRT会員であるDavid Podellは主に中小企業の経営者を対象に税引き前の経費を節約する方法を指導してきました。経営者はしばしば年度末までに事業経費を使い過ぎたり、税負担を軽減するために収益を翌年に回したりしていました。

「弊社は税引き前ベースでより多くの利益を事業から引き出す方法を示し、所得税を減らし、場合によっては税率を下げることさえできるような提案をしています」と述べます。

彼はそのやり方を開業医ではなく特定の医療分野に特化した専門医に例えます。小規模事業者向けの戦略として確定給付年金を専門にしたことが多くの紹介を生み出し、知識と顧客基盤が拡大するにつれて焦点をさらに絞り込めるか分析しました。その結果、従業員が50人以下の企業に対して価値を創出することにしました。

「お客さまが直面する共通性のある問題に対し最善の解決策を見つけるにはターゲットを明確にする必要がありました。私たちはよく観察することで本命のお客さまが抱える問題を把握して、そのニーズに対応するより良いサービスを提供する方法を学びました。こうした課題を中心に専門知識を深め、信頼できるスペシャリストとしての地位を確立しました」と言います。

Podellの事業が自分のクライアントの役に立つことを知った会計士からも注目されるようになりました。「今では弊社が関係を築いた会計士からの紹介が2番目に多くなりました」と語りました。

彼らの言葉で話す

英国イングランドSouth Yorkshireの26年間MDRT会員であるAlessandro M. Forte, FCII, CFPは経営者をターゲットにする際にファイナンシャル・アドバイザーではなく同じ経営者として会話することを勧めます。

「自分もビジネスを経営している立場で話をすれば、経営者として生きることの利点や課題に同じように対処している方々とより効果的に交流することができます。人間関係は共感に基づいているので、経営者の方々にはアドバイザーが根本的なところで自分と繋がっていること、非常に多くの点で似ていることを認識していただかなければなりません」と述べました。

私たちはよく観察することで本命のお客さまが抱える問題を把握して、そのニーズに対応するより良いサービスを提供する方法を学びました。
—David Podell

Forteのサービスは富裕層(以下HNW)クライアント、特に映画、テレビ、演劇、プロスポーツ界の有名人に特化しており、どのお客さまも経営者のように自分のブランド価値を高め、守るべきものとして認識しています。Forteは演劇とスポーツのバックグラウンドのおかげでスターたちと「業界用語で話す」ことを学びました。18歳のときに俳優を目指し、大学で英語と演劇の学位を取得した彼は、ホッケーチームのキャプテンとしても全国レベルで活躍していました。しかし父親が亡くなったことで進路が変わり、家族を支えるためにアドバイザーになりました。

「2つの職業についての幅広い知識は自信に繋がり、スポーツ界やエンタメ業界のセレブとレベルの高い会話ができるようになりました」と言います。

Forteはニッチな顧客を開拓する唯一の方法が同じ職業を経験することだと言っているわけではありません。十分な情報を持つことが良好な関係を築くのに役立ちます。ターゲット市場を理解する方法のひとつはニッチに属している人々にたくさん質問することです。Forteはポッドキャストを始めることでそれを実行しました。ポッドキャストを配信した3年間で210人にインタビューし、73人の新規顧客と100件以上の紹介を獲得しました。

「誰もが好きな3つの話題があります。自分のこと、自分が抱えている問題、自分が好きなことです。さまざまな職業の人を招待して成功談や失敗談を語ってもらうのは、その人をもっと知り、どのように支援することができるかを話し合う絶好の機会でした」と言います。

彼が克服した障害のひとつは、既に富裕層には財務プランを扱う専門家がいるはずだという多くのアドバイザーが持つ思い込みでした。「私たちの経験では大多数のHNWはお金を稼ぐことに忙しくて財務計画について考えることを忘れています」とForteは述べました。

一流の人には厳しい監視の目がありますが、ツテが何もない彼は「特別な手紙」と呼ぶものを送ることにしています。手紙は3部構成になっています。冒頭ではどのようにしてその人物の詳しい情報を入手したのか、例えば雑誌の記事やテレビ出演を通してだと説明します。次の部分では出身や兄弟の数が同じである、唯一無二のブランドを持っていることなどの共通点をあげ、どんなことでもいいので何らかの繋がりをアピールします。最後に連絡してくださいという招待状です。手紙は色つきの封筒に入れて宛名と住所を手書きします。封の上にさらにテープを貼り、用心棒や秘書が連絡したい相手より先に開封することがないようにします。Forteはこの20年間1週間に1通のペースで手紙を送り、毎年2~3人から返信が届きトップ・オブ・ザ・テーブルの資格を得るのに十分なビジネスを得ています。

ネットワーキングの達人

ネバダ州Hendersonの9年間MDRT会員のHoward Allen HopkinsonⅡ, FSS, FSCPもまた経営者を仲間と見なしてその気持ちに寄り添い、自らを問題解決のリソースと位置付けています。そして経営者のビジネス上の課題をサポートすることができる人間を専門家から成るネットワークから選んで紹介しています。

「小さな事業の経営者は消灯スイッチを持っていません。私たちは常に勤務中です。朝起きると仕事のことを考え、オフになることがありません。定時に帰れる従業員とは違います。夜中に目が覚めても仕事について考えてしまいます。経営者なら思い当たるでしょう」と言います。

彼は20年前に損害保険セールスを造園業者や配管工、建築リフォームの下請け業者への飛び込み営業から始めました。単に保険の話をするだけでなく、経営者に給与の計算や医療保険への加入をどうしているのか、個人事業主として所得税を払うことのプラス面とマイナス面、合同会社と株式会社との比較、これらに関して専門家のアドバイスが必要か尋ねました。必然的に話の流れはリタイアメントの相談ができる人がいるとすれば誰なのか、資産を増やすための戦略、収入の確保および出口戦略へと繋がっていきました。

「これはきっかけに過ぎません。彼らとのビジネスが軌道に乗ったらさらに『お客さまの公認会計士はどなたですか。良い仕事をしていますか。人件費を管理しているのはどなたですか。資産税対策は行いましたか。信頼できる信託専門の弁護士はいますか』と問い掛けます。他の士業の方々に小規模事業者を紹介するのは簡単ですし、今では士業の方々が定期的に仕事を回してくれるようになりました」と述べます。

彼の事業は損害保険の販売からファイナンシャル・プランニングへと進化を遂げ、ニッチも下請け業者から一般的な小規模事業者へと拡大しました。事業の宣伝はほぼ全て専門家の幅広いネットワークが担っています。

「外部のマーケティングに頼らなくてもオフィスの電話が鳴り続けることが目標でした。ビジネスの基盤を築いて他の士業の方々に仕事を提供できるようになれば、彼らもお返しをしなければならないと考えるようになります」とHopkinsonは語りました。

勉強会での発見

英国イングランドLeamington Spaの26年間MDRT会員のAsvin Chauhan, MIFP, Dip FAはお客さまから会計士を紹介され、その会計士の兄弟と別の顧客がたまたま薬剤師であったことから自分のニッチ分野に出会いました。Chauhanは2人の薬剤師の保険をお預かりして、数年たってから初めてその職業を専門的に扱うべきだと考えるようになりました。紹介を依頼すると20人の薬剤師仲間からなる勉強会に招待されました。20年ほど前のことです。3年が経過し、彼との戦略的な協力が素晴らしい成果をもたらすことをプレゼンした結果、グループの半数がクライアントになりました。

「私が薬剤師に関心を持ち現在もターゲットにしているのは彼らが私の不正確な英語を理解し、私も薬剤師の不正確な金融用語を理解できるからです。彼らは数字に強いですが、私は元々会計士だったので分析が得意で数字を深く掘り下げます。私は好奇心が強く、そのことも彼らを引きつけるようです」と述べます。

Chauhanが共感する薬剤師とアドバイザーの別の共通点は、家族経営が多く、規制が厳しいことです。期限内に書類を作成したり提出したりすることが苦手など、一緒に仕事をする上で難点もありますが薬剤師が優良顧客であることは明らかです。

「新しい薬剤師のクライアントでまだアドバイザーと契約していない人、あるいは過去にアドバイザーと契約したことがない人などいません。どの薬剤師もアドバイザーがいますがアドバイザーの方がうんざりしているのが現状で、大変さを考えれば仕方がないことです。そのため私たちはさらに深く掘り下げて努力しなければならないことが分かりました。彼らは最終的にはアドバイスを受け入れるので一緒に仕事をするのは非常にやりがいがあります」とChauhanは述べます。

そこでこのニッチ市場をさらに開拓するため全国的な医薬品見本市に参加し、最初は入場料を払いゲストとして会場を歩き回りました。

「会場の雰囲気に浸るのが目的でした。セッションを聞いたりもしましたが、内容を理解できたわけではありません。そこで何が行われているのか大まかにでも把握することが目的でした」と言います。

また銀行員や会計士などのベンダーが薬剤師に商品やサービスを販売しているのを見て、自分の事業をPharma Wealthとしてブランディングすることを思いつきました。その後会場のブースを借りて400件の連絡先を集めました。フルタイムひとりとパートタイムひとりのスタッフでは対応しきれない数で、その多くは薬学部の学生でした。そこでマーケティング会社と組んでより洗練されたメッセージを発信し、次の見本市では「まさに求めていたもの」、つまり事業を売却して引退を予定している薬剤師で経営者の連絡先を45件も入手できました。

共同作業のニッチ

カナダ、バンクーバーの23年間MDRT会員であるMicheline Varas, RHUは昔から内気な性格で見込客に加入を促して顧客にするために長話をするのが上手ではありませんでした。得意でないことは彼女も認めています。

「私が得意なのは人の話を熱心に聞き、自分一人で分析や計算を行い、戦略的なプランを考え出すことです」とVarasは言います。

彼女は他のアドバイザーが困っている引き受けが難しい案件の引受先を確保する仕事を天職と感じるようになりました。ビジネスモデルを研究するために多くのアドバイザーにインタビューをして、現役アドバイザーはどんな仕事を引き受け、どんな仕事を避けているのか学びました。数年前にカナダのアドバイザーの大半はまだ高度障害所得保障を扱っていないことに気付きました。この商品は保険料が高く、定義や種類もさまざまで引き受けに時間がかかり過ぎていました。

信頼関係とポジショニングのおかげで、通常であれば断られるケースでも何とか標準体の保険料で引き受けてもらっています。
—Micheline Varas

「さまざまな保険会社や団体、福利厚生を提供するプランを研究し、文言を理解し、カナダ市場の解約不能で更新保証がある保険を比較しました。それから複数のアドバイザーに会い高度障害所得保障スペシャリストとして仕事を募り、アドバイザーがやりたがらない仕事を私が代わりに引き受けました。彼らにはお客さまを維持しコンプライアンスを守り、時間を投資することなく報酬を得るというメリットがあります。私はクライアントを獲得しなくても取り組めるビジネスを得ることができます。理想的なwin-winの関係でした」とVarasは述べます。

また世界中の保険会社や系列のアンダーライターや再保険会社と繋がりを持ち、業界の会議で講演をし、さまざまな出版物に記事を書き、研修や教育イベントを開催し、この分野における献身的な専門家としての評判を築きました。

「本当に難しいケースの場合はアンダーライターや再保険会社に個別に電話をします。彼らがそのリスクについて納得すれば、次にどの保険会社を通すべきか尋ねます。信頼関係とポジショニングのおかげで、通常であれば断られるケースでも何とか標準体の保険料で引き受けてもらっています。信頼を得ているからこそできることです」とVarasは語りました。

クライアントを探さなくても他のアドバイザーや保険会社がVarasに仕事を持ち込んできます。彼女は最近保険会社の担当者とランチをしたときにも、その担当者がサポートしているアドバイザーを自分が支援できると明言しました。

Varasは「御社のアドバイザーが法人顧客のためにバイ・セル・プラン(訳注: 共同経営者の一方が他界したら保有株式を買い取るための保険)をお預かりすることになり、その中の1人が御社では保険に加入できないとします。法人案件の場合、誰かが加入できなければ保険を諦めると言うかもしれません。でもその案件を本当に失ってもいいのですか。あなたとアドバイザーにとって不利益になりませんか。私に声をかけてくだされば、あなたが彼らを助けられるようにサポートします」と説明しました。すると担当者は「OK、でもあなたがこのビジネスを獲得するわけではありませんよ」と言いました。それに対しVarasは「その通りですが、私の協力があればあなたはアドバイザーの信頼を得ることができます。私たちの仕事は究極的には幅広い人々に精いっぱい奉仕することです」と答えました。

彼女の仕事はほぼ100%カナダや海外のアドバイザーとの共同作業ですが、好ましい紹介の多くは保険会社の担当者や上級管理職から来ています。

トラブルシューター

Paula Cherie Jonesもまた障害と思える分野の解決者となることでチャンスを見いだしました。彼女のニッチ市場は住宅ローン・ブローカー、特に初めて住宅を購入する人にサービスを提供する業者です。初めて家を買う人は住宅ローンのお金をかき集めるのに精いっぱいで保険に加入する余裕がなく、成果を出すのが難しく見えます。しかしニュージーランド、クライストチャーチの5年間MDRT会員のJonesはこうした人々にも保険が必要であると感じました。彼女は予算カウンセラーとしてボランティアをしていたことがあり、若いカップルが借金を返済して夢のために貯蓄できるように資金を調達したり出費を抑えたりするのを助けていたので、その経験を生かすことにしました。

「私は彼らのために予算計画を立て、住宅ローンを組む余裕があるなら最初は少額でも保険に加入するべきだと指導しました」と言います。

Jonesは住宅ローンのブローカーを通して住宅を購入する人にアプローチしています。ニュージーランドではブローカーも金融サービス・アドバイザーのようにリスク系の保険販売免許を持つことができます。住宅ローンを申し込む人が所得補償保険に加入しているなら、病気やケガで働けなくなり収入が途絶えても支払いを継続できるので貸し手に好印象を与え、ローンが承認される可能性が高くなります。

「住宅ローンのアドバイザーは財務にも詳しく、保険も扱いたいと考えていますが、手続きや引き受け査定が非常に難しいということがしばしばあります。クライアントを私に紹介するのは、引き受けや契約書の文言が十分に理解できない保険を扱いたくないからです」と彼女は述べました。

Jonesはブローカーやアドバイザーが保険の課題について話し合う業界の会議やイベントにも出席し、必然的に難しい案件の対応を聞かれます。そのようなときは「難しいケースは私に電話してください」と答えます。彼女は紹介されたクライアントのために予算を見直せば住宅ローンも保険も払えることを示します。

「保険の必要性について話し合うため初めてお会いするとき、お客さまは可処分所得を多くは持っていません。そのため私たちは手を尽くす必要がありますが、お客さまはずっと付いてきてくれます。私を信頼してくれるのでわざわざクライアントを探しに行く必要がありません。お客さまの中には追加の物件を購入したり、家庭を持ったり、良い職業に就いたりしている素晴らしい方々がいます。長期的な視点に立てば、お客さまはスタート時点では富裕層ではなくても最終的には富裕層になる可能性があります」とJonesは語りました。

自然に手に入れたニッチ市場

Ann Baker Ronn, CLU, ChFCがニッチ市場を見つけるまでの道のりは、好機は時として自分の目の前に横たわっているという気付きを証明するものでした。

夫のDavidは弁護士で、夫婦で多くの社交イベントに出席し、そこで彼の同僚と知り合い仲良くなりました。新しい知人たちはテキサス州ヒューストンの26年間MDRT会員である彼女のビジネスを知るようになり、夫が数年にわたり複数の法律事務所でキャリアを積むにつれ、弁護士と秘書から成る彼女の顧客基盤も口コミで増えていきました。

「興味深いことにDavidのことを仕事ができる立派な人だと思って、私のところに来る人もいました。夫が優秀だから私も優秀だと思ってくれたようです」とRonnは言います。

彼女がスペシャリストであることを意識するようになったのは、約20年前にコーチを雇い弁護士と仕事をするのが好きな理由を振り返ったときでした。弁護士は仕事ができて物分かりが良く、情報をすぐに返してくれます。自身も弁護士と結婚しているため、彼らが長時間働いていること、ビジネスと家族を第一にする一方で自分のための時間がほとんどないこと、経済的なアドバイスを切実に必要としていることを理解していました。例えばある富裕層の弁護士のお客さまは生命保険に十分に加入していると主張しました。Ronnが保険証券を見せてもらったところ、実際には事故による死亡保険と高度障害の保険だったので、事実上ほとんど保障がないことが分かりました。「弁護士は重要な事柄を処理するのが苦手ですが、それはファイナンシャル・アドバイザーが代行できます」とRonnは述べました。

コーチは彼女になぜ弁護士市場にフォーカスしないのか尋ねました。「少し恥ずかしくなりましたが、コーチの言う通りだと思いました」と彼女は言います。

Ronnはスペシャリストになることを前向きに受け止め、彼女の評判は弁護士の間で高くなっていきました。また若い医師もターゲットにしています。このグループは働き方や仕事への献身、財務プランに対する洞察力のなさという点で弁護士と似ています。

「ターゲット市場はひとつだけでなくても良いと思います。ニッチ市場を選ぶときに自分の周りを見回してまだ手を付けていない市場はないか、一緒に働きたい人たちがいる市場はないかと自問するべきです」とRonnは語りました。

Contact

Asvin Chauhan ac@ashleighcourt.com
Alessandro Forte sandro@forte-financial.co.uk
Howard Hopkinson howie@secureff.com
Paula Jones
paula@jonesinsurance.co.nz
David Podell david@bbconsultantsllc.com
Ann Ronn ann@afpgroup.com
Micheline Varas michelinev@customplanfinancial.com