皆さんはプロセスを文書化し、業務の流れを全てリストアップし、各業務の担当者に責任と権限を与え、チェックリストやワークフロー・ソフトウエアで追跡しています。プロセスを持つことは継続的に改善する戦いの半分に過ぎません。もう半分は軌道修正をすることです。
一貫性を保ってミスを避け、クライアントを喜ばせる文化を育むには、定期的に微調整を行い、より優れた円滑な運営方法を追求することが必要です。ITツールを追加したり、シンプルに手順を改善し無駄な作業を廃止してワークフローを調整したりすることが求められるかもしれません。スタッフのフィードバックはその調整を始めるうえで、何がダメで何が欠けているのかを知るための貴重な情報源になります。
己を監査する
世界最高のシステムであっても、スタッフの評価が低ければうまく機能しません。社内に目を向けることは、事業プロセスのどの部分が順調でどの部分は改善する必要があるのかを特定する助けになります。
シンガポールで15年間MDRT会員のChee Hong(Vincent)Gan, ChFC, CLUは「反復的な作業があるなら、担当者の負担を軽減するため自動化したり何かしらテクノロジーを活用したりできないか検討する必要があります。私はそういう仕事を担当するスタッフから直接意見を聞きますが、それは毎週ミーティングを行っているからです。例えばそのときにクライアントから新しいリクエストが来たけれども会社のシステムでは対応できない、といったフィードバックを受けます。問題はソフトウエアだけではありません。システムに関連する問題の場合は、解決策を導入する前にプロセスに組み込まれた考え方や設計を見直すこともあります」と述べました。
Meredith Gail Langus, FSCPはアシスタントに嫌いな仕事は何かを尋ねてプロセスを微調整しています。
「フィードバックするように求めて彼女が働きやすくなるように変えています。気が乗らない仕事を嫌々していると効率が悪いので、私自身が積極的に調整しなければならないこともあります。スタッフには私たちと同じようにビジネスに全力で取り組んでほしいので、何を変えればいいのか彼女と一緒に考えてもっと効率的になるよう努めています」とニューヨーク州White Plainsの12年間MDRT会員であるLangusは述べました。
オーストラリア、ビクトリア州Abbotsfordの16年間MDRT会員のBrad Isaac, GDFPは8年以上前に現場と管理部門のプロセスをPDF上のシステムにまとめ、Clarity Advantage(明晰であることの利点)と名付けて社内で使い始めました。クラウドで共有できるデジタル・マニュアルを作ることを考案し、内容の多くは実際に業務を行っているスタッフが書きました。
「この文書には弊社の仕事の全てが書かれており、いつでも中身を精査してより良い方法があれば内容を変更することができます。デジタル化されており、常に最新の情報に更新されています。フィー開示書類の作成であれパラプランナーのアドバイスをまとめた戦略書類の準備であれ、実行しなければならないことには必ずプロセスがあります。特定の文書を開いてプロセスを確認するシステムは非常に使いやすく、スタッフやパラプランナーがそれに従って業務に取り組んでいる様子を知ることができます。全てが文書化されているので急に誰かが辞めて新しい人が入ってきても、何をどのようにすれば良いのかすぐに分かります」と述べました。
さらにClarity AdvantageをWorksortedという事業管理CRMと統合し、管理部門のプロセスをデジタル化しました。タスク管理とチェックリストを自動化したことで「業務を拡大し、将来の成長に備えてさらにアドバイザーを迎え入れることができるようになりました」。
皆さんの基準値は?
プロセス主導型になるには目標への進捗を測定する必要があります。Mark D. Olson, CFP, MSFSは10人のアドバイザーやアシスタントと共に年間125件のプランを扱っており、一つのタスクが完了すると次の手順が終わるまでの期限を設定するワークフロー・アプリを活用しています。成功を測る一つの基準は、最初の面談から3ヶ月以内にクライアントにファイナンシャル・プランを届けられたかという点です。それ以上長くなるとクライアントは興味を失う可能性があります。
「その期間は短ければ短いほど望ましく、測定するのはとても簡単です。倍の時間がかかったのはどの案件か、どのステップで手間取ったのかを調べることができます。特定のアドバイザーが関係しているのか、クライアントが情報をくれなかったからなのか、といったことが分かるので時間を短縮する方法を検討することができます。私たちはこのような方法で達成度を確認しています」とテキサス州オースティンの25年間MDRT会員である彼は述べました。
顧客との面談回数や電話回数、成約件数は営業活動の典型的な指標です。カナダ、オンタリオ州Ingersollの10年間MDRT会員Jonathan Peter Kestle, CLU, B Comは自社の対応力やサービスを測るそれ以外の方法について検討し、一定期間中に受信した不通電話や不在着信、留守番電話の数を集計しました。この件については週に3回、優先度が高・中レベルの議題を扱う1時間のスタッフ・ミーティングでも話し合いました。
「私は常に物事をどのように進めるかというビジョンを持っています。何かを解決する際にはそのビジョンに沿ってできるだけスタッフを参加させることにしています。例えば規制によって新しい書類が必要になったのに、新しいプロセスに慣れなくて先月3回も添付し忘れたとします。書類を確実に含めるためにはどんな対策があるだろうか。チームはかなり積極的に意見を言いますが、最終的にこうした事柄の責任を担うのは管理部門です。私は彼らに問題点を指摘するだけでなく実行性のある解決策をいくつか提案するよう促すことにしています」と述べました。
テスト走行
彼のもうひとつの調整戦術は、会社が提供するあらゆる商品やサービスを利用するイマジナリー・クライアントを創造することです。そしてチームと共に架空取引のプロセスを設計してテストします。
「弊社が行う全てのサービスを必要とする理想的なクライアントを創出しました。保険やあらゆる種類の投資勘定を所有しており、既に閉鎖された口座さえ見直すために維持しています。コンプライアンス・ファイルやCRMプロファイルも作成し、私たちはテクノロジーやプロセスの観点から『どうすればこのような人物を発掘できるか?最初の面談をどうやって取りつけるのか?どのように提案を行い、アドバイスを実行し、サービスモデルを設計して継続的にサポートするか?』を考えます。どちらかというと顧客リストから本物のクライアントを選んで考察するより架空のクライアントをつくってプロセスを構築する方が簡単です」と語りました。
非難より問題解決を優先する企業風土があれば、継続的な改善を促進することができます。ニューヨーク州Syracuseの10年間MDRT会員であるTerri E. Krueger, ChFCは非効率的な点がないかを確認するため、自分自身でプロセスのテスト走行を行っています。またアシスタントたちにも適切でないことや、もっと良い方法があれば教えてほしいと伝えています。
「私たちは完璧ではありませんが、互いに協力して完璧であるように見せることができます。スタッフには私の間違いを見つけてほしいし、そうすれば私が彼らの間違いを指摘しても嫌な気持ちにならないと思います。私たちは1つのチームであり責任を押し付け合うことはありません」と述べます。
軌道修正をすることは重要ですが「車輪を最初から発明すること」にハマらないようにしてください。プロセスを作ることに多くの時間を使い過ぎるとアドバイザーとしての仕事がおろそかになってしまいます。強力で生産的な事業管理システムで業務を遂行しようと努力することは、効率性だけでなくもっと多くの面で成果を生み出すでしょう。
「プロセスを構築することには価値があります。いつか事業を売却することがあれば価値が大きく膨らむ可能性があります」とIsaacは語りました。
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Chee Hong Gan vincentgan@thevinceproject.com
Brad Isaac brad@finstyle.com.au
Jonathan Kestle jonathan@ianmoyer.com
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Meredith Langus meredith.langus@equitable.com
Mark Olson mdolson67@gmail.com