潜在的なお客さまに出会ったら、まずきちんと調査することで後に大きな問題が生じるのを防げます。しかしどの見込客を維持し、どの見込客を見送るかはアドバイザーによって異なります。どのような人が面倒なクライアントになるのか必ずしも明確でないからです。
潜在顧客との最初の面談はまさに双方向のインタビューであり、審査は相互に行われます。ほとんどのアドバイザーにとって、意地悪で過度な要求をする人は自分が扱わないサービスを求める人と同じくらい役に立たない存在です。しかし審査が表面的だと悪質なクライアントが顧客リストに紛れ込むかもしれない、と英国South Yorkshireの26年間MDRT会員Alessandro M. Forte, FCII, CFPは言います。
そのためMDRT会員は見込客を吟味する戦略や、適さない場合に切り捨てるプロセスを開発してきました。オハイオ州Lancasterの13年間MDRT会員のKasey Hammer, MBAは簡潔に次のようにまとめました。「私たちは時として最高のクライアントから離れなければならない」
彼女が警戒する信号のひとつは複数のファイナンシャル・アドバイザーを渡り歩いてきた方です。
「頻繁に担当者を変えるクライアントは不満を持っているかもしれないし、人のアドバイスを受け入れないため満足させることが難しいかもしれません」と述べました。
雰囲気を感じ取る
Forteは見込客との最初の面談で主に2つのポイントに重点を置きます。一緒に仕事をするのに十分なほどお互いを気に入っていること、そして助けられるか見極めることです。
「お客さまには私をアドバイザーにするのかどうか決める正当な権利があります。しかし私もあなたをクライアントにするかどうか確かめます。配偶者でも家族でも素晴らしい人間関係の基礎は双方向でなければならないからです」とForteは言います。
ノースカロライナ州Atlantic Beachの28年間MDRT会員であるAnthony G. Engrassia, ChFC, LUTCFは「適正コール」と呼ぶセキュリティ・システムを構築しました。彼のスタッフは見込客に20分ほどの予備的な電話インタビューを行い、財務面で何を優先しているのか2、3点挙げていただくことにしています。
Engrassiaはこうした電話によって潜在顧客が投資会社の得意とする投資を主な目的にしているかどうかが分かると言います。「弊社はどちらかというと総合的なプランニングをする会社なのでお客さまには私たちとの相性が良くないこと、プランニングにはフィーがかかるのでお客さまが望むような価値を生み出せないことをお伝えします」と述べました。
最初の審査ラウンドに続きEngrassiaは資産税対策、遺贈計画、リタイアメント・プラン、投資計画など同社が提供するプランニングのさまざまな側面について意見を交わします。ファイナンシャル・プランニングのパズルの1ピースだけを埋めたいと思っている人は他社に紹介することが多いということです。
とは言え、潜在顧客の個別ニーズとのミスマッチだけが取り引きの妨げになるわけではありません。賢いアドバイザーは性格の適合性についても注意を払います。
ユタ州Draperの22年間MDRT会員のBrad J. Myersはクライアントと正式な取引関係に移行する前に4回も面談を行います。Myersはassets (資産)、attitude(態度)、 advocacy(擁護活動)を考慮する「トリプルAプロセス」と呼ぶ審査方法を用いています。
「2つ目のAであるattitude(態度)は、お客さまにとってもアドバイザーである私にとっても勝負所です。私たちは好きな人、一緒にやっていけそうな人とだけ仕事をしたいと思っています。結婚している方は配偶者の方との接し方にも目を向けます」と言いました。
Myersとスタッフ、あるいは夫や妻に対してけんか腰のクライアントは断ることが珍しくないと言います。
カナダのオンタリオ州Caledoniaの15年間MDRT会員のTravis D. Manning, CFP, CLUも同様にアドバイザーとクライアントの関係が始まった段階で負の側面がないか観察し、後に見えてくる気質を予測します。Manningはしばしば最初の面談の前にクライアントを受付のエリアで待たせ、愛想が良いスタッフとどうやり取りするか注視します。「受付のスタッフは非常に社交的で人当たりが良いので、その人と仲良くできないような方の場合、私を含めて他のスタッフと付き合えるのか考えてしまいます」と述べました。
潜在顧客がユーモアのセンスを持っているかも確認しています。「私が冗談を言うとたいていお客さまは打ち解けてくれます。しかしあまりにも心を閉ざしていて何も共有する気がないなら、少し危険信号です」と述べました。
その他の赤信号
クライアントからひどい態度を受けることは明白な危険信号ですが、身内に対する扱いも一緒に仕事をする際のヒントになるとManningは言います。「家族を大切に思っていないなら即座にノーと言います」
クライアントはよく自分が死んだ後のことはどうでもいい、どうせその時自分はこの世にいないのだからと冗談を言いますが、中には本気でそう思っている人もいるそうです。「そのような考え方に対応したいとは思わない」とManningは言います。
Myersによれば敬意に関する危険信号は見込客が他の人、特に配偶者をプロセスに参加させるかに現れることがあります。クライアントとアドバイザーの関係は夫が主導することが多く、中には意図的に妻に隠している人もいます。「そのようなときは少々中断して奥さまを連れてくるよう頼むことにしています。私たちが奥さまと話して人間関係を築けるようにしてください、とお願いします」とMyersは述べました。
その他に注意すべきなのはアドバイザーの私生活を尊重しない見込客です。ManningもHammerも早い段階で明確な境界線を伝え、週末や夜間の電話をお断りしています。
「私には4人の息子がいて全員がスポーツをしているので週末は仕事をしない、それは家族の時間だと前もって言うとクライアントは尊重してくださいます。たまに夜でも仕事をすることがありますが、ほとんどは通常の営業時間内にとどめています」とManningは言います。
Hammerと3人のスタッフには合わせると12人も子どもがいるので、全員が子どもを学校に送り届けてから出社し、迎えの時間に合わせて退社して習い事に付き添うという柔軟性のある社内文化を築きました。
お客さまの多くは仕事より家庭が優先されること、子どもの行事があるときは返答が1日ほど遅れることを理解しています。お客さまも自分のお子さんを最優先しています。お客さまを吟味するときは価値観が一致しているか確かめています。携帯番号を聞いて夜8時に電話をしてもいいか聞いてくる人も、夜間にオフィスに立ち寄って相談したいと言ってくる人も、「申し訳ありませんが、そのような相談はお受けしていませんのであなたのアドバイザーになるつもりはありません」と断ります。
ふさわしくない顧客を見送る
審査プロセスの目的は問題のある、あるいは相性の悪いクライアントを封じることです。Engrassiaのように「適正コール」をフィルターとして使うこともできますが、時にはアドバイザーが後になってからその方との関係がうまくいかないことを思い知らされることもあります。
Manningは相性の良くない潜在顧客に、しばらく考えてから電話するよう伝えています。再度連絡してきたら通常はメールで、弊社のサービスは彼らが必要としているものではないので別の機関に相談したほうが良いと思うと伝えます。
「別の方向を指し示すようにしています」と述べました。
Manningの場合はほとんどのクライアントは紹介によるものなので事前に見込客の状況をある程度理解しています。「99%は良い人が良い人を紹介してくださいます」と打ち明けました。
Myersも質の高いクライアントを紹介されるため断ることは滅多にないと言います。トリプルAプロセスの3つ目はAdvocacy(擁護活動)ですが、これは一緒に仕事をするのにふさわしい友人や家族に対してMyersを推奨するよう既存顧客に促すことを意味します。基本的には審査のもう一つの層だと言えます。
「お客さまに重要な書類をお届けして助けたことを感謝されたら『私たちも素晴らしい経験をさせていただきました。お客さまと仕事をすることは楽しく、今後もお客さまのような方々のために働きたいと思っています。そこで私たちが助けられる人をどなたか教えていただけませんか?』と返答することにしています」とMyersは語りました。
Contact
Anthony Engrassia tony@wmsnc.com
Alessandro Forte sandro@forte-financial.co.uk
Kasey Hammer kasey@ffs-invest.com
Travis Manning travis2@evers-financial.com
Brad Myers bmyers.dwm@gmail.com