金融サービスにおける競争が激化する中で専門家としての地位を確立したアドバイザーは、市場での足がかりをつかむことができます。専門家として評判を高める方法のひとつは本を書くことです。ベストセラーとはならずとも強力なマーケティング・ツールになります。
Michael W. Hanna, CFP, RICPは長年お客さまに伝えてきたアドバイスを文書化しようと思い「Get Your Money Right」を自費出版しました。アメリカ、ニューヨーク州ニューヨークの10年間MDRT会員であるHannaは伝えたい内容からまず目次を作成しました。その後自宅のキッチンや旅先での休憩時間を使い、2年かけて「本質的な財務理解のためのベスト・アドバイス集」を作りました。
「多くの人と話をするうちに、話題に上るのは同じポイントや分野であることに気付きました。そこでそれを文書化し、人が通勤中に読んだり家族や友人に紹介したりできるようにしたいと思いました」と述べます。
彼はこの本をウェブサイトやソーシャルメディア、ポッドキャストを含むマーケティング手段のひとつとして、お客さまに配布しています。見込客が誰から紹介されたかは追求しませんが、本の効果を証明するエピソードは耳に入ってきます。
「口コミの力は大きいと思います。この本を持っていたあるお客さまが、別のお客さまの主催したハッピーアワー・イベントに参加しました。彼女の所属する弁護士会のメンバーも参加するということで、別室を借りて私の本も置かせてもらいました。そこにいらっしゃったまた別のお客さまは私が本を出したことを初めて知ったそうで、数ヶ月後に彼女ともハッピーアワー・イベントを開催することになりました」とHannaは言います。
Ralph Antolino Jr., J.D., CLUは、「Bon Voyage:The Nine Secrets of the Ultra-Happy」を含む3冊の本を出版しました。人生を欲望に支配されるのではなく、幸せになるための行動、姿勢、習慣について書いています。経営者のお客さまは従業員のためにこの本を注文されます。アメリカ、オハイオ州Columbusの42年間MDRT会員である彼は、節税やファイナンシャル・プランニング、保険などの専門的な話に入る前に新規顧客にこの本を読んでもらっています。この本はお金に関してだけでなく、素晴らしい幸せを実現するために会社がお客さまに対してどのようなお手伝いができるかを説明しています。
「この本は、私たちが何者であるか、哲学的観点からどのように考えるか、そして一緒に仕事をすることで何が得られるかを見込客に知っていただくためのツールです」と言います。
出版したばかりの3作目の著書「Is My Money OK?」は、専門家の力を借りずにファイナンシャル・プランをDIYしたい人を教育し、注目を集めることを意図しています。彼の会社独自のプロセスで目標を設定し、財務上の決定をする方法について説明しています。
「ファイナンシャル・プランニングを自力で試みて、挫折したお客さまがたくさんいます。この本は個人でファイナンシャル・プランニングをする方法について書いています。DIYを希望しない、またはDIYをしていてサポートが必要な場合は、私たちがお手伝いします。この本で会社の理念や仕事内容を知っていただき、話をする価値のある存在だと認識してもらえたら光栄です」とAntolinoは語ります。
出版し周知する
Charlie Reading, APFSは英国Rutlandの6年間MDRT会員です。最初の著書「The Dream Retirement」で100万ポンド以上の収入を得ました。これは本の売り上げではなく、この本をきっかけに仕事をすることになったお客さまから得た収益です。だからこそ彼は本を無料でお渡ししています。
「本に値段は書いてありますが、お得意さまには無料で差し上げます。収入は本の売り上げではなく、未来のお客さまからの手数料であるべきです」と彼は言います。
Readingは金融リテラシーに関して複数の本を出しており、出版を目指すアドバイザーのために独自のガイドを作りました。
- まずデジタル・マインドマップ(プロジェクト計画のブレイン・ストーミング・ツール)を作ります。そして書きたい内容を論理的なチャプターに分けます。「本を書き進めて新しいアイディアが出たらその都度コンセプトを変えたくなるので、こうしておくととても便利です」と彼は述べます。
- お客さまからよく寄せられる悩みを集約し、多くの方が直面する葛藤や、達成したい目標に沿ったタイトルを選びます。
- 次に、2つのリストを作成します。1つはあなたが話したいことで人も興味を持って聞いてくれるもの。そしてもう1つは、カバーしておきたいトピックです。
- お客さまからよくいただく質問のリストと、お客さまが質問すべきことのリストを作ります。
「表紙、または本の中に自分の写真を載せます。こうすることで読者に親近感を持っていただけます」とReadingは付け加えます。
出版社探しが困難だと思うのであれば、従来の方法に頼らず自費出版することをReadingは勧めています。
「著書『Entrepreneurial Happiness』は従来の出版社に持ちかけましたが、後悔しました。ビジネス書は自費出版する方がいいと思います。出版までのペースなどを調整できますし、この先改訂する場合も自由に修正ができるからです。Amazonの自費出版サービスが便利です」とReadingは述べます。
3万語から6万語を目標にして執筆に集中する時間を定期的に確保します。「書いていくとマインドマップやトピックの質問、話のネタから、書くべきアイディアが浮かぶようになります」とReadingは言います。
宣伝のコツ
- 見込客がメールアドレスを入力するとダウンロードできる形で本の内容の一部を提供します。その後、数ヶ月間付加価値のあるメールを自動配信します。
- メールアドレスの入力を条件として、ウェブサイト上で本のデジタル版を無料で提供します。
- 出版記念パーティーを開き、そこで撮った写真を専門家としてのマーケティングに使います。
- 機会があるごとに見込客に本をプレゼントします。これにより専門家と位置付けられ新規顧客の獲得に繋がります。
「本を書くことで専門家になれます。自分の著書は最高の名刺です。見込客が本を読まなかったとしても、捨てる可能性ははるかに低いからです」と彼は言います。
専門家と著者
ニッチな分野に特化し、それについて書くことで複合的な効果をもたらすこともあります。英国Oswestryの29年間MDRT会員のKarl Harteyは年金、離婚、経済的和解に焦点を当て、これらのテーマについて本を書きました。本はなかなか売れませんでしたが、ある高収入クライアントにより彼の努力は報われることになりました。
あるお客さまから知人が離婚することになったのでHarteyの本を贈ってほしいと依頼されました。正確には離婚をするのは知人の母親で、著名な政治家でした。早速本を送付したところ翌朝には本のお礼の電話があり、直接お会いすることになりました。その出会いが、その後数年間にわたり1000万ポンドのビジネス増加に繋がりました。
「本を出版することで信頼を得られます。専門分野の本を出版することでライバルと差別化することができ、専門家としてお客さまに信頼していただけるようになります」と言います。
自費出版の成功がきっかけとなり、Harteyは退職、介護、税金・遺産計画などのトピックを取り上げた「All You Need to Know About...」シリーズを書きました。Harteyと同僚は、クリスマスの1ヶ月ほど前に、上位100名のお客さまに別の著書「Securing Your Family's Financial Future: 60 Top Tips」を送り、プレゼント用に追加を希望するかどうかも尋ねました。
「20冊ほどリクエストがあったので、その後半年ほどの間にお送りしました。その結果、10人の新規顧客獲得に繋がりました」と述べます。
Contact
Ralph Antolino rjantolino@antolino.com
Michael Hanna mhanna@azurawealth.com
Karl Hartey karl@karlhartey.com
Charlie Reading charlie@efficientportfolio.co.uk